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「学校閉鎖は流行阻止効果に乏しい」と小児科学会

2020.05.28

 日本小児科学会(岡明会長)が小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する国内外の感染事例や論文などを分析した報告書をまとめた。多くの臨床所見に見られる特徴などを列挙したほか、「学校や保育施設での症例からクラスターはないか、あるとしても極めてまれ」とした上で「学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しい」と踏み込んだ見解を示した。日本小児科医会(神川晃会長)はまた、2歳未満の乳幼児にマスクは不要でむしろ危険、とする見解を発表している。

 同学会の予防接種・感染症対策委員会がまとめた報告書は「小児の新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見の現状」と題し、臨床所見や症状分布、治療上の注意点などを詳述した。報告書はまず、「中国では19歳未満の患者は全体の2.4パーセント、米国では18歳未満の患者は全体の1.7パーセント、日本国内でも5月3日の時点で10 歳未満の患者総数は246 人で1.6パーセント」と患者に占める小児の割合は少なく、ほとんどは家庭内感染だったとするデータを示した。

 その上で、「15の学校で18人の患者(生徒9人、学校職員9人)が 863人(生徒735人、職員128人)と濃厚接触したが、感染が確認されたのは生徒2人」とするオーストラリアのデータや欧州の例を紹介。日本国内で報告された香川県の保育所での園児2人、富山県の小学校での5人の希少感染例を示しながら「インフルエンザとは異なり、COVID-19 が学校や集団保育の現場でクラスターを起こして広がっていく可能性は低いと推定される」との見解を明らかにした。

 報告書はさらに「学校閉鎖は、その他のソーシャルディスタンシングと比べて効果は少なく、一方、医療従事者も子どもの世話のために仕事を休まざるを得なくなることから、医療資源の損失による死亡数が増加し、結果として学校閉鎖はCOVID-19死亡者をむしろ増加させると推定されている」「学校閉鎖は、単に子ども達の教育の機会を奪うだけではなく、屋外活動や社会的交流が減少することとも相まって、子どもを抑うつ傾向に陥らせている」などと学校閉鎖に伴うマイナス面を数多く挙げている。

 このほか報告書は、小児の新型コロナウイルスは鼻咽頭よりも便中に長く大量に排せつされること、乳児では発熱の症状しか出ないことがあること、小児の特徴的な胸部CT所見があることなど、一般医療機関の医師や保護者に参考になる所見を列挙した。

 日本小児科学会はこの報告書に加え、「新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて」もホームページで公開している。この中で小児のマスクについては「くしゃみや咳に含まれる飛まつを直接浴びない利点はあるが、小さな子どもでは現実的でない」との所見を出している。

小児の COVID-19関連被害。日本小児科学会は「子どもは多くの場合、親から感染しているが、幸いほとんどの症例は軽症。しかし、COVID-19 流行に伴う社会の変化の中でさまざまな被害を被っている」としている(日本小児科学会提供)
小児の COVID-19関連被害。日本小児科学会は「子どもは多くの場合、親から感染しているが、幸いほとんどの症例は軽症。しかし、COVID-19 流行に伴う社会の変化の中でさまざまな被害を被っている」としている(日本小児科学会提供)

 日本小児科医会は「2歳未満の子どもにマスクは不要、むしろ危険」とする見解を25日に発表した。同会はその理由として、「乳児の呼吸器の空気の通り道は狭いので、マスクは呼吸をしにくくさせ、呼吸や心臓への負担になる」「マスクそのものやおう吐物による窒息のリスクが高まる」「マスクにより熱がこもり熱中症のリスクが高まる」ことなどを挙げている。

米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)
米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)

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