増加している世界の温室効果ガス排出量を抑えないと今世紀末の気温は産業革命前と比べて最大4度近く上がり「破壊的な影響」が生じる——。このように警告し、地球温暖化対策の強化を世界各国に求める報告書を国連環境計画(UNEP)が26日、公表した。報告書は、パリ協定が努力目標として掲げる1.5度の上昇幅に抑えるためには排出量を年7.6%ずつ減らす必要があると指摘している。一方、日本の環境省は29日、国内の2018年度の温室効果ガス排出量は前年度比3.6%減って5年連続減少したと発表した。日本は2030年度の排出量を2013年度比26%減らすことを目標に掲げているが、2018年度の排出量は2013年度比で11.8%減にとどまり、同省は引き続き大胆な削減が必要としている。
「Emissions Gap Report 2019」と題したUNEPの報告書によると、人間の活動による温室効果ガスはこの10年平均で年1.5%ずつ増え、2018年の排出量は553億トン(二酸化炭素換算)になり過去最大となった。パリ協定で各国が約束している現在の排出量削減目標では2030年時点の排出量が560億トンになる。そして、このままでは今世紀末に気温が3.4〜3.9度も上がってしまい「破壊的な影響」が生じる恐れがある。パリ協定に基づいて協定に参加する各国の削減目標を達成しても3.2度上昇するという。
パリ協定は、温暖化による深刻な被害を防ぐためには産業革命前から今世紀末までの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指している。報告書は、気温上昇を1.5度に抑えるためには2030年の排出量を320億トン減らす必要があり、そのためには現在年1.5%ほど増えている排出量を毎年7.6%減らす必要があると分析。2度未満を目指す場合でも、毎年2.7%の削減が必要としている。
報告書はまた、20カ国・地域(G20)で世界の全排出量の78%を占めるため、これらの国が率先して社会や経済の在り方を転換し、温室効果ガス排出量削減対策を強化する必要があると指摘している。
一方、29日午前、発表された2018年度の日本の温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)は12億4400万トンで前年度比3.6%減。1990年度の統計以来最小値だった。環境省は昨冬が暖冬だったことや省エネルギーが一定程度浸透したことなどを要因と分析している。ただこの削減ペースでは国際公約している「2013年度比26%減」目標の達成は難しいとみられている。日本の目標は1990年度比で40%以上の削減を表明している欧州主要国の目標より低い。このためUNEP報告書の「対策の強化」要請に応えるためには、環境省も指摘しているように大胆な削減策が求められる。
第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が12月2日から13日までスペイン・マドリードで開催される。UNEPは会議を前に会議参加各国に削減目標の引き上げを促した形だ。UNEPとは別に世界気象機関(WMO)も25日に温室効果ガスの世界平均濃度が昨年、観測史上最高に達したと発表している。