小惑星「りゅうぐう」上空に到達していた探査機「はやぶさ2」が11日午前、りゅうぐうへの2回目の着陸に成功し、世界初となる小惑星地下物質の採取にも成功したとみられる。小惑星の地下物質は宇宙線などで風化していない。このため採取と地球への持ち帰りのいずれも成功すれば太陽系や生物の起源と進化解明などに貴重な手掛かりになると世界の研究者が期待している。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)プロジェクトチームによると、昨年6月にりゅうぐう上空に到達していたはやぶさ2は10日午前、りゅうぐう上空約20キロから着陸に向けて降下を開始。毎秒40センチほどの速さで降下を続け、同日夜に上空約5キロに達した段階で毎秒約10センチに減速し、少しずつ表面に近づいた。そして上空約30メートルまで降下したところで一度停止して着陸地点を最終的に確認。11日午前10時すぎに着地したことを示す信号が地上の管制室に届いた。
着陸地点は、4月にできた直径約10メートルの人工クレーター中心から約20メートル離れた幅約7メートルの楕円(だえん)形の場所。はやぶさ2は、機体が地表面に触れた瞬間に岩石採取用の筒から金属弾を発射、人工クレーターができた際に散乱した地下の岩石を再び舞い上がらせてキャッチし筒に回収するという難しい作業に挑戦した。
プロジェクトチームによると地上に届いたさまざまなデータから、岩石破片の採取にも成功したとみられるという。はやぶさ2はこの極めて難しい作業をあっという間に終え、ふたたびりゅうぐう上空の待機場所まで上昇した。
はやぶさ2は現在地球から約2億5千万キロ離れている。このため地上からの通信は14分かかるため、着陸の直前、直後は機体に組み込まれた機体自身が判断する「自律モード」で動いた。
はやぶさ2は、2月に最初の着陸を果たし、4月にはりゅうぐう表面に金属弾を撃ち込んで人工クレーターをつくった。その際に表面の岩石採取に成功したとみられている。ただ、小惑星の表面にある岩石は宇宙線や太陽風に長い間さらされて風化していると考えられるため、今回は世界初の試みとして風化していない地下物質の採取を目指した。
これらの貴重な試料は、約46億年前に太陽系が誕生したころの“情報”を宇宙の長い歴史の中で保持していたと考えられている。地球の生命体はりゅうぐうのような小惑星が地球に衝突してもたらした有機物などが起源という説がある。しかしその説を検証する証拠はなかった。
りゅうぐうは、地球と火星の軌道付近を通りながら1年余りをかけて太陽の周りを回っている1999年に発見された小惑星。はやぶさ2の観測でそろばん玉のような形をしていることが判明している。地球との距離は変化するが現在は約2億5千万キロ。幅は約900メートル。先代のはやぶさが調べた小惑星イトカワの2倍ほど。水分や有機物を含む岩石が存在して原始太陽系の痕跡をより多くとどめているとされている。