昨年6月に小惑星「りゅうぐう」上空に到達していた探査機「はやぶさ2」が11日にりゅうぐうへの2回目の着陸を試み、世界初となる小惑星の地下物質の採取に挑戦する。小惑星の地下物質は宇宙線などで風化しておらず、採取と地球への持ち帰りのいずれも成功すれば太陽系や生物の起源と進化解明などに貴重な手掛かりになると世界の研究者が期待している。
昨年6月にりゅうぐう上空に到達していたはやぶさ2は、2月に最初の着陸を果たし、4月にはりゅうぐう表面に金属弾を撃ち込んで人工クレーターをつくった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「はやぶさ2プロジェクトチーム」によると、表面の岩石採取は成功したとみられる。これ自体快挙だが、小惑星の表面にある岩石は宇宙線や太陽風に長い間さらされて風化していると考えられるため、今回は風化していない地下物質の採取を目指す。
計画では、着陸するのは人工クレーター付近。着陸目標地点は人工クレーターの中心から約20メートル離れた幅約7メートルの楕円(だえん)形の場所で、大きな岩がない場所が選ばれた。着地の際に地表に弾丸を発射し、舞い上がった地下の岩石などを特殊な筒を使って回収する。
これらの貴重な試料は、約46億年前に太陽系が誕生したころの“情報”を宇宙の長い歴史の中で保持していたと考えられている。地球の生命体はりゅうぐうのような小惑星が地球に衝突してもたらした有機物などが起源という説がある。しかしその説を検証する証拠はなかった。
2回目の着陸にもし失敗すると、2月に採取できたとみられる表面岩石を地球に持ち帰ることもできなくなるリスクがある。しかしチームの津田雄一准教授は「挑戦しない選択肢はない」と述べている。小惑星の地下から「太陽系誕生時の痕跡」を持ち帰るという壮大なミッションは世界の宇宙探査を先導してきた米宇宙航空局(NASA)でも例がなく、世界の研究者がはやぶさ2の挑戦を見守っている。
はやぶさ2は、小惑星「イトカワ」に2005年に到達した「はやぶさ」の後継機。はやぶさはイトカワ表面の岩石採取には失敗したが着陸の際に舞い上がったとみられる微粒子のサンプルリターンに初めて成功している。はやぶさ2は約600キロ。推進装置はイオンエンジンで、光学カメラやレーザー高度計など先端技術を駆使した機器類や着陸機を積んでいる。2014年12月に鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた。地球の重力を利用する「地球スイングバイ」で方向を変えるなどして太陽の方向に飛行を続け、昨年6月27日にりゅうぐう上空に到達した。飛行距離は約32億キロにも及んだ。
りゅうぐうは、地球と火星の軌道付近を通りながら1年余りをかけて太陽の周りを回っている1999年に発見された小惑星。はやぶさ2の観測でそろばん玉のような形をしている。幅は約900メートル。先代のはやぶさが調べた小惑星イトカワの2倍ほど。水分や有機物を含む岩石が存在して原始太陽系の痕跡をより多くとどめているとされている。
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