国立科学博物館は21日、未来に引き継ぐのにふさわしい重要科学技術史資料(未来技術遺産)の2018年度登録対象に、世界で初めてのクオーツ式腕時計や自販機普及の先駆けとなったコカ・コーラの自動販売機、小型オープンリール・テープレコーダ、壁掛け式エアコンなど19件を新たに選定し登録した、と発表した。未来技術遺産の登録は2008年に始まり、今回で合計259件となった。
国立科学博物館によると、コカ・コーラの自動販売機は新三菱重工業(現・三菱重工)が1962年から69年頃まで製造。現在の自販機の基盤となる技術を備え、「自販機大国」と評される日本の新たな生活様式を創出した。小型オープンリール・テープレコーダは市場に定価1万円で導入されて大きなシェアを確保した。三菱電機の壁掛け式エアコンは室内機と室外機と分かれて画期的な薄型化に成功した。またセイコーのクオーツアストロン35SQは、当時の諏訪精工舎(現・セイコーエプソン)が製作した世界初のクオーツ式で、同社が特許を公開したためクオーツ式の時計が世界に広がった。
今回登録されたのは以下の19点〈「」内は選定理由、( )カッコ内は所在地、所有者、製作年〉
- FACOM128Bおよび関連資料 「日本のコンピュータ黎明期を牽引したリレー式計算機」(静岡県沼津市、富士通、1959)
- ボトル自販機V-63 「広く日本国内に普及した飲料用自販機」(東京都港区、コカ・コーラボトラーズジャパン、1962〜69頃)
- FinePix4700Z 「世界初のハニカム構造 CCD 搭載デジカメ」(埼玉県さいたま市、富士フイルム、2000)
- ヘリカルスキャン試行実験天板 「ヘリカルスキャン方式CTの実現に道を開いた実験器具」(愛知県豊明市、藤田保健衛生大学、1988)
- 小型オープンリール・テープレコーダRQ-303 「マイソニック」「テープレコーダ市場を大きく拡大した1万円テレコ」(大阪府門真市、パナソニック、1963)
- アイソレートループ方式オープンリール・テープデッキRS-1500U 「ユニークなテープパス系と DD 大径キャプスタンを装備した高級テープデッキ」(大阪府門真市、パナソニック、1976)
- 最高級写真顕微鏡ニューバノックスAHBS 「世界初の AF を含む自動化を実現した画期的顕微鏡システム」(東京都八王子市、オリンパス、1983)
- CF方式光学系研究用生物顕微鏡バイオフォト 「世界初のCF方式光学系による顕微鏡性能の飛躍的向上」(埼玉県熊谷市、ニコン、1976)
- 油圧ショベルUH03 「操作性と動作速度が大幅アップ」(茨城県土浦市、日立建機、1965)
- 磁石式手動交換機 「日本における最古の交換機形式を残した磁石式電話交換機」(東京都武蔵野市、日本電信電話・情報ネットワーク総合研究所、1961)
- カーボンロールCARBOLEADER 「世界最長クラスのカーボンクラッドメッキロール」(千葉県白井市、三菱ケミカル/サンレイ工機、2012)
- クーリッジX線管U型 「独自の工夫で取扱いを改善した初期のX線管」(福岡県福岡市、九州大学、1925頃)
- 医療用X線装置 「ダイアナ号」および関連装置 「最初期の医療用X線装置」(京都府京都市、島津製作所、1920〜23)
- 日立705形自動分析装置 「臨床検査に適した小型化、高効率化を実現した自動分析装置」(茨城県ひたちなか市、日立ハイテクノロジーズ、1983)
- 世界初の病院検査室用自動検体搬送「ベルトラインシステム」 「病院検査部職員自らの手で世界に先駆け開発 」(高知県南国市、高知大学医学部附属病院、1984)
- 壁掛セパレート型エアコンMS-22SA 「現場の技術開発で薄型化を実現」(静岡県静岡市、三菱電機、1968)
- ロータリーコンプレッサB型シリーズ 「国内最初期のエアコン用ロータリーコンプレッサ」(静岡県富士市、東芝キャリア、1969)
- セイコークオーツアストロン35SQ 「世界初のクオーツ式腕時計」(長野県塩尻市、セイコーエプソン、1969)
- 世界初多局受信型アナログ電波修正時計「シチズン電波時計(Cal.7400)」 「世界で初めて多局受信機能を搭載した電波腕時計」(東京都西東京市、シチズン時計、1993)
関連リンク
- 国立博物館プレスリリース「平成30年度国立科学博物館「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」19件の登録について」