稲盛財団が科学や文明の発展などに貢献した人に毎年贈る京都賞の今年(第33回)の受賞者に、新型のトランジスタを発明して情報通信技術の発展に貢献した富士通研究所の三村髙志(72)名誉フェローと地球環境問題の議論にも積極的に参加したオーストラリアの植物生理学者、米国の音楽学者の3人が選ばれた。授賞式は11月10日に国立京都国際会館で行われ、3氏に京都賞メダルと賞金 5,000万円が贈られる。同財団がこのほど発表した。
稲盛財団によると、三村氏は「先端技術部門」の受賞で受賞理由は「高電子移動度トランジスタの発明とその開発による情報通信技術の発展への貢献」。同氏は1970年に大阪大学大学院基礎工学研究科の修士課程修了後に富士通に入社し、その後富士通研究所にて転籍し半導体分野の研究を続けた。2種類の半導体を積層化した新型のトランジスタ「高電子移動度トランジスタ(HEMT)」を発明し、情報通信技術の発展に貢献したほか「極薄伝導層内の電子の物性研究」の進展にも寄与した。HEMTは衛星放送用受信機の性能を高めたことで知られている。
「基礎科学部門」は、植物生理学者でオーストラリア国立大学のグレアム・ファーカー特別教授(69)が選ばれた。「光合成の機能モデルの開拓と地球環境変化の科学への貢献」が受賞理由。光合成の炭素同化反応の機能を調べるモデルを開発し、大気中の二酸化炭素の増加が植物の光合成に与える影響を予測できるようにした。環境科学と気候変動科学の発展に寄与したことが評価された。
ファーカー氏は1997年に京都市で開かれて「京都議定書」が採択された「第3回気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)」にオーストラリア代表として参加したほか、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)のメンバーとしても報告書作成などに尽力した。
また「思想・芸術部門」の受賞者は音楽学者で、米カリフォルニア大学バークレー校のリチャード・タラスキン名誉教授(72)。「音楽史研究と批評を通じて基本概念や作曲家像を決定的に更新し、音楽観の変革を促してきた知の巨人」が受賞理由。従来の歴史記述の方法を乗り越えた斬新な音楽史研究や先鋭的な批評が評価された。4,000ページを超える「オックスフォード西洋音楽史」が代表的著作として知られている。
関連リンク
- 稲盛財団ホームページ
- 稲盛財団プレスリリース「第33回(2017)京都賞受賞者発表(2017年6月16日)」