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PCB濃度が精子に悪影響の可能性 東北大調査

2017.02.15

 かつてさまざまな工業製品に使われた化学物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)の血中濃度が高い男性は、精子の数が少ない傾向にあるー。このような研究結果を東北大学の研究グループがまとめ、このほど英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に発表した。

 PCBは電気製品の絶縁油のほか、塗料、溶剤など幅広い分野で使われていたが、強い毒性があるために国内では1972年に製造、使用中止の行政指導が行われ、法整備の後75年には製造、輸入が禁止された。しかしPCBを使用した機器類が廃棄されずに一部公共施設などに残っており、食物などを通じて動物や人の体内に低濃度ながら蓄積している可能性がある、とされている。生殖機能への悪影響も指摘されていた。

 東北大学大学院医学系研究科の有馬隆博(ありま たかひろ)教授と仲井邦彦(なかい くにひこ)教授らの研究グループは、不妊治療を受けた男性221人を対象に調べた。精子の数が目立って少ない「乏精子症」の人は30人、やや少ない人は40人、残りの151人は精子の数は正常だった。

 血中PCB濃度と精子異常との関係を分析した結果、乏精子症の人のPCB濃度は、精子が正常な人の濃度と比較して平均で1.6倍高かった。

 研究グループはまた、精子と卵子が受精する際に遺伝子の働きを制御する「DNAメチル化」と呼ばれる反応が大きく変動することに着目、精子のDNAメチル化反応と精子の数との関係を調べた。すると、精子の数が正常な人の場合、この反応に異常が生じている人の割合は約17%だったが、乏精子症の人の場合はその割合は約70%と高かった。

 このほか、DNAメチル化反応が異常な精子を用いた体外受精は、この反応が正常な精子による体外受精よりも妊娠率が目立って低いことも判明した。

 これらの結果から研究グループは、PCBが精子のDNAメチル化反応に異常を起こして精子数を減少させ、不妊につながっている可能性があるとみている。

図 環境因子が精子に与える影響(東北大学研究グループ作成・提供)
図 環境因子が精子に与える影響(東北大学研究グループ作成・提供)

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