国立情報学研究所が中心になって開発したAI「東(とう)ロボくん」が大手予備校の大学入試センター試験模擬試験に挑戦した結果、全教科の合計の偏差値が57.1だったと、同研究所がこのほど発表した。この成績は、国公立23大学、私立512大学で合格可能性80%以上と判定されたが、目標だった東大合格圏には届かなかった。
東ロボくんは、センター試験で国語や数学、世界史など5教科8科目を受験した。その結果、合計点は525点(全国平均454.8点)で、偏差値は57.1で昨年とほぼ同じだった。今回の偏差値は、国公立23大学30学部、私立512大学1,343学部で合格可能性80%以上と判定された。関東、関西の「難関」私立大も含まれていた。
科目別では、物理は62点で偏差値は昨年の46.5から59.0へと大幅に伸びた。世界史Bも偏差値は66.3と昨年同様好成績だった。5教科8科目のうち数学(数学IA・数学ⅡB)、英語(筆記)、物理、日本史B、世界史Bの4教科6科目で、同じ模試を受験した約12万人の平均を上回る偏差値50以上の成績だった。
大学入試センター試験模擬試験とは別に2次試験を想定した論述式模擬試験は、理系数学の偏差値が76.2と極めて高い成績を収めた。数式処理プログラムの改良の効果だという。
国立情報学研究所などのチームは、AIが東京大学に合格できる知能を得られるかを調べるために2011年にAIプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を開始。21年度までに東京大学入試を突破することを目指して得点や偏差値を調べていた。今回、大学入試センター試験模擬試験で東京大学の合格可能性が80%に達しなかったことや、読解力の向上が必要なことなど課題も明らかになった。
同研究所は、今後は数学の論述問題など東ロボくんの得意分野をさらに伸ばすことなどに重点を置いた研究を進める方針という。
関連リンク
- 国立情報学研究所プレスリリース「NII人工知能プロジェクト『ロボットは東大に入れるか』/センター試験模試6科目で偏差値50以上」