睡眠と覚醒を制御する2つの遺伝子を見つけた、と筑波大学などの研究グループがこのほど英科学誌ネイチャー電子版に発表した。睡眠は人生時間の約3分の1を占めて誰もが毎日体験する現象でありながら仕組みや役割について詳しいことは分かっていない。研究が進めば多くの人を悩ませている睡眠障害の治療などの研究に貢献すると期待される。
哺乳類や鳥類は浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を繰り返すことが知られている。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の船戸弘正(ふなと ひろまさ)教授、柳沢正史(やなぎさわ まさし)機構長・教授らの研究グループは、約8千匹のマウスを対象に、ある種の化学物質を使って特定の部位に限定せずにランダムに遺伝子変異を起こさせた。さらに遺伝子変異を起こしたマウスの脳波や筋電図を分析し、睡眠時間が長い(覚醒時間が短い)グループと、レム睡眠時間が短いグループに分けて、それぞれのグループに共通の遺伝子変異を調べた。
その結果、睡眠時間が長いグループは「Sik3」という遺伝子に、またレム睡眠時間が短いグループで「Nalcn」という遺伝子にそれぞれ異常があることが分かった。これらのことから研究グループは、Sik3は睡眠と覚醒を制御してノンレム睡眠の必要量を決定し、Nalcnはレム睡眠を終わらせる仕組みを司っているとみている。
研究グループには、筑波大学のほか、東邦大学、名古屋市立大学、新潟大学、理研バイオリソースセンター、国立長寿医療研究センターが参加した。
関連リンク
- 筑波大学プレスリリース「睡眠・覚醒制御の分子ネットワーク解明への道を拓く新規遺伝子の発見」