本田財団はこのほど、新素材セルロース・ナノファイバー(CNF)の高効率製造法の開発や製品への応用、将来の応用可能性拡大に貢献したとして、東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明(いそがい あきら)教授(61)と京都大学生存圏研究所生存圏開発創成研究系の矢野浩之(やの ひろゆき)教授(57)の2氏に2016年の本田賞を授与することを決めた。
本田財団などによると、CNFは植物細胞壁の基本骨格物質である「セルロースミクロフィブリル束」の総称。鋼鉄と比べて5分の1の 軽さでありながら強度は5倍以上あるナノ繊維新素材として注目されている。自然界に豊富に存在する植物由来の「持続型資源」で、石油系プラスチックの代替や構造材の補強用繊維などで広く利用されている。
磯貝教授は「TEMPO触媒酸化法」と呼ばれる手法を開発。木材からCNFを簡単に取り出す手法でCNF生産の効率とCNF構造の均質性を大幅に改善した。矢野教授は「パルプ直接混練法(京都プロセス)」と呼ばれる手法を開発し、CNFを作ってから樹脂などの複合材と混ぜていた従来の生産プロセスを改善し、生産時間とコストを大幅に削減することに成功した。本田財団は「CNFの生産方法の改革や活用領域拡大への貢献は授賞にふさわしい成果」としている。
本田賞は今年で37回目。授与式は2016年11月17日に東京都の帝国ホテルで開催され、メダル、賞状とともに副賞として合計1,000万円が磯貝、矢野の2氏に贈呈される。
(本田財団提供)
関連リンク
- 本田財団プレスリリース「2016年本田賞」