エックス線天文衛星「ひとみ」の運用断念という事態を受け、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、科学衛星の開発に携わる企業と研究開発担当者との責任分担を明確にするなど、開発・運用体制を大幅に見直すことなどを柱とした再発防止策をまとめた。5月31日に開かれた科学技術・学術審議会・宇宙開発利用部会の検証委員会でJAXAが再発防止策を盛り込んだ詳細な報告書を提出した。
公表された再発防止策は、衛星の開発・運用に参加する企業とJAXA担当部門との役割分担や責任関係が不明確だったなど体制の不備が今回の事態を招いた大きな要因とする調査結果に基づいてまとめられた。これまでは、衛星の開発から打ち上げ、運用、科学探査実施に至る一連の作業の最終責任を科学観測研究責任者がすべて担う形になっていた。
「ひとみ」の運用断念に至ったいくつかのミスやトラブルの原因についてJAXAは、これまで詳細に調査。今回報告書の中で「役割分担と責任関係のほかプロジェクト体制が不明確だった」「第3者による確認の仕組みや手法が不十分だった」「安全に運用するための意識が不足していた」「確実に運用するための基本動作ができていなかった」「運用よりも開発が優先されて運用準備が後回しにされた」などと厳しく自己批判、総括をした。
再発防止策は、打ち上げ前の運用準備の段階で第3者がチェックして事前の安全確認を徹底することや、プロジェクト業務の文書化と品質記録を徹底することも柱にしている。
これまでの調査報告書によると、ひとみは、打ち上げは成功したもののその後に、運用参加企業の担当者が姿勢制御用エンジンのデータを誤入力したことから異常回転し、太陽電池パネルが外れて分解した。衛星の姿勢制御システムにも欠陥が見つかった。