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姿勢制御装置が誤作動 通信途絶えた天文衛星「ひとみ」

2016.04.20

 打ち上げ後に軌道上でトラブルが起きたエックス線天文衛星「ひとみ」について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、トラブルの原因や衛星の現在の状態などについて詳細な報告書をまとめ、19日公表した。報告書は「試験観測中に衛星の姿勢変更をした後、姿勢制御装置が誤作動したことが主な原因」としている。

 天文衛星「ひとみ」は、2月17日夕方に鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた。しかし、観測機器類調整中の3月26日午後から通信が途絶えた。その後一度通信できたが再び途絶えた。現在、速い速度で回転していると推定されている。

 こうしたトラブルの原因について報告書は、「ひとみ」が3月26日に機体の姿勢を変更した後、姿勢制御装置が、実際には衛星が回転していないのに回転していると判断して、誤作動を起こして異常な回転状態にしてしまった、などとした。

 また、「ひとみ」には姿勢制御に関係するトラブルの際にも太陽の方向に機体を向けて充電するバックアップ機能も備わっており、回転を戻そうとして自動噴射したが、逆に回転が加速してしまった、という。バックアップ機能にも設定ミスがあった可能性がある、という。

 「ひとみ」はその後も回転を続け、遠心力により衛星本体から10個以上の破片が分離した。分離した部分は太陽電池パネルと機体から長く伸びた光学観測装置などで、このうち2つの破片は、4月29日と5月10日に大気圏に突入して大気圏中で燃え尽きる、とみられている。

 JAXAは、姿勢制御系装置誤作動の原因に、人為的なミスがなかったかなど、さらに詳しく調査を続けている。また、太陽電池パネルの半分が残っていれば供給電源が再び確保できるなどとして、引き続き復旧に努めている。報告書は19日開かれた「科学技術・学術審議会」の「宇宙開発利用部会」に提出された。

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