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高被引用論文2割増・企業からの共同研究受入額5割増 第5期基本計画に目標値

2015.11.30

 策定作業が進む第5期科学技術基本計画に、被引用回数が多い重要論文数増加や大学に企業との共同研究を促すための目標値が盛り込まれる見通しとなった。若手研究者増を図る目標値も含まれる。女性研究者については、第4期科学技術基本計画に掲げられていた新規採用割合に関する数値目標(自然科学系全体で30%、理学系20%、工学系15%、農学系30%、医学・歯学・薬学系合わせて30%)が、再度盛り込まれる。

 26日に開かれた総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会で配布された資料は、第5期科学技術基本計画が対象とする2016年度からの5年間で達成する目標を示している。知の基盤を示す指標となる研究論文の数と質を高めるための目標として、被引用回数がそれぞれの分野で上位10%に入る重要論文数を2013年の実績である6,546件から2割増の約8,000件とすることを計画に明記する、としている。

 8,000件という目標値は、計画の最終年度である2020年度を含む前3年間の年平均で約80,000件の論文が日本全体で発表されると推定し、それぞれの分野で被引用回数がトップ10%に入る重要論文を1割にしたいという期待から割り出された。

 また、公的研究資金の伸びが期待できない財政状況下で大学に期待されているのが、企業との共同研究を増やすことによる研究開発費の確保策。企業との共同研究で企業から大学に入る額を現在より5割増やす目標が掲げられている。

 さらに、40歳未満の大学本務教員の数を1割増加させるとともに、将来は3割以上とすることを目指すことも盛り込むとしている。

 日本の研究基盤の低迷は、内外の報告などからも明らか。日本の研究基盤の実情に詳しい豊田長康(とよだ ながやす) 鈴鹿医療科学大学学長によると、日本の大学のFTE研究者数(頭数ではなく研究時間を考慮した研究者数)を人口当たりでみると先進国の最低レベル。大学への人口当たり公的研究資金は、カナダ、フランス、ドイツ、英国、米国、日本の主要6カ国中、最低で、他の5カ国の平均に比べ約半分にとどまる。2002年からはこれら主要5カ国と比べた人口当たりの論文数割合も低下を続け、12年には、主要5カ国平均の45%でしかない、という。

 一方、公的資金に頼る国立大学側に対して改革を求める声も目立ち始めている。上山隆大(うえやま たかひろ) 政策研究大学院大学副学長のように、企業との共同研究など社会の中で活動を伸ばすことで多くの資金が大学に入るような経営を大学人全体で考えるべきだという声が聞かれる。

 総合科学技術・イノベーション会議は、今回の数値目標が入っていない「第5期科学技術基本計画」答申素案について、11月2?16日にパブリックコメントを実施済み。12月10日の基本計画専門調査会で答申案をまとめ、 総合科学技術・イノベーション会議で答申を決定した後、年度内に閣議決定という予定を明らかにしている。

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