経済産業省は3日の閣議に「2015年版通商白書」を報告、新興国が同時に直面しつつある高齢化と都市化を、日本の技術とイノベーションの強みを生かす好機と捉える必要を強調した。
白書は、新興国の都市化と高齢化の進行予測が、高所得国とは大きく異なることを注視している。国連のデータによると、高所得国の場合、1970年代を境に都市化率の上昇ペースは緩やかになり、高齢化が都市化に遅れる形で進み、今後、加速すると予測されている。
これに対し上位中所得国は、2030年ごろまで都市化が急速に進み、高齢化も2020年以降に加速し、その後も持続する。下位中所得国の都市化は今後長期にわたって継続し、高齢化も2020年以降加速する。低所得国は、下位中所得国同様、都市化は今後長期にわたって継続し、2030年以降に高齢化が進展し始める−とされている。
新興諸国・地域はいずれも今後、高齢化と都市化という二つの難題に同時に対応せざるを得なく、具体的には高齢化対策として医療・健康分野、都市化対策として都市のインフラ整備という二つの巨大な市場が、新興諸国・地域に現れることを意味する、と白書は見込んでいる。実際に上位中所得国の一人当たり医療費支出額が2000年代に増加に転じた後、急速に増え続けていることを示す世界銀行のグラフも示した。
日本が世界で稼ぐ力をつけるために不可欠なこととして、日本企業のグローバル経営力強化を挙げ、「世界中の才能を集め、人材のダイバーシティを進める」必要を指摘している。具体的には留学生の日本企業への就職や定着などの重要性を挙げた。さらに、海外事業活動の拡大を図るには適切なリスクも取る必要があるとして、精度の高いリスクマネジメントについても触れている。
アンケート結果を基に「日本のグローバル企業のリスクマネジメントに対する認識および取り組みは充実しつつあると言える」と評価する一方で、「海外子会社やM&Aで取得した子会社については必ずしも本社と同様の管理ができていないこと、組織間の役割分担の曖昧さ」などの課題があることも指摘している。
国連と世界銀行のデータによると、新興国に属する人々の数は約58億人。このうち一人当たり年平均所得が平均600ドルの低所得国に約8億人、平均2,300ドルの下位中所得国に約26億人、平均7,000ドルの高位中所得国に約24億人という人口分布となっている。いずれも実質GDP(国内総生産)成長率は、2003~2013年の年平均で、4.7~4.9%の範囲内に入っているのが、大きな特徴だ。高所得国(年平均所得37,000ドル、人口約13億人)の1.5%を大幅に上回っている。
白書は、世帯の可処分所得が 年平均5,000ドルを超えると、洗濯機や冷蔵庫、各種家庭製品の保有率が急速に上昇し、7,000~10,000 ドル辺りから外食や教育、レジャーなど各種サービスへの消費性向が急速に上昇、12,000 ドルを超えるとヘルスケア分野への消費性向が高まる、という経済産業省のデータも紹介している。
関連リンク
- 経済産業省プレスリリース「『平成27年版通商白書』をまとめました」