福島第一原発の廃炉に向けた取り組みについて国際原子力機関(IAEA)の調査団がまとめた報告書を、経済産業省が14日公表した。作業が進んでいることを評価した20項目を挙げる一方、15項目に上る「助言」も盛り込まれている。
報告書はまず、福島第一原発の現状を「依然として大変複雑」と表現し、「原子炉建屋に流入し続ける地下水や汚染水の集積、放射性廃棄物の長期にわたる管理、核燃料取り出しや損傷した燃料・燃料デブリ(※1)の取り出し」を残された「挑戦的な課題」として挙げた。
報告書は最初に、将来の福島第一のあるべき姿について全ての関係者(ステークホルダー)が引き続き議論を重ねることを促している。原子力規制庁の認可が必要な活動か、東京電力が内部的に評価・承認すべき活動かを判断するために、「リスク評価に基づいた明確な基準の確立」を原子力規制庁に働きかけるよう東京電力に勧めているのも目を引く。
原子炉建屋やタービン建屋への地下水流入について、地下水バイパスによる対策の結果、半年間で流入量を約25%減らしたことを評価する一方、汚染水の管理に関しては持続可能な解決策が必要だとしている。海洋への管理された放出の再開を含む全てのオプション(選択肢)を検討し、トリチウムとその他の残存核種を含んだ水を海洋へ放出することによって生じる、住民と環境に対する潜在的な被ばく影響を評価することを東京電力に助言した。
東京電力に対してはさらに、廃炉と放射性廃棄物管理のための総合的な計画を作成するよう促している。
廃炉の中でも作業の困難が予想される使用済み燃料と燃料デブリの取り出しについては、全体の安全性とリスク低減の枠組みの中で検討する必要があるとしている。具体的には、プール内の使用済み燃料と炉内の燃料デブリ取り出し計画に関しては、労働安全と作業者の被ばくを考慮し、徹底したリスク分析を行うことを官民共同出資で設立された原子力損害賠償・廃炉等支援機構に求めた。
広報活動とコミュニケーションの重要性にも触れている。環境の保護、作業者と公衆双方の健康と安全に関連づけることにより、一般聴衆が情報の関連性を理解しやすくするよう経済産業省と東京電力に勧めた。さらに東京電力に対しては、双方向的な対話を強化・拡大することにより理解を促進させるとともに、発信された情報をメディアと公衆がどのように理解するかについて徹底的に分析し、将来のコミュニケーションを改善するために活用するよう助言した。
関連リンク
- 経済産業省プレスリリース「国際原子力機関(IAEA)による東京電力(株)福島第一原発1〜4号機の廃炉に向けた取組に関する第3回レビューの最終報告書を受領」