規制緩和は製造業の国内特許出願や新製品投入を促すものの、全体としては研究開発投資を抑制する方向に働くという調査研究結果を、科学技術・学術政策研究所が13日、公表した。
この調査研究は、効果的なイノベーション政策を打ち出すには、規制が研究開発活動やイノベーション活動に与える影響を明らかにすることが重要、との考えに基づいている。同研究所が毎年、実施している「民間企業の研究活動に関する調査」のデータと、経済産業研究所の「日本産業生産性データベース」の規制指標が使われた。研究開発活動のインプット(予算・人員などの投入量)を見るために社内研究開発費、社外支出研究開発費、社内と社外の研究開発費総額を、アウトプット(成果)を見るために国内特許出願件数、新製品投入の有無を用いている。
結果は、前年と比較して規制緩和が進むと社外支出研究開発費は増加するが、社内研究開発費と研究開発費総額は減少し、全体として研究開発活動の規模が縮小する可能性があることを示した。一方、規制緩和により企業の国内特許出願が増加し、新製品の投入も増える傾向があることも示唆している。ただし、製品特性や企業規模によって、規制緩和による研究開発活動への影響は正負両方あることも分かった。
調査研究グループは、「企業による研究開発投資を促進し、投資規模を拡大したい場合には、規制の施行・ 強化が有効に機能する可能性があり、一方で研究開発の外部化(オープンイノベーション)や研究開発活動のアウトプット生産を促進させたい、あるいは投資の適正化を促し投資効率を向上させたい場合には、規制緩和が有効に機能する可能性がある」という見方を示している。
同時に、産業によって規制の種類や性質が異なる点や、期間による規制の影響の違いなどが今回の調査研究では十分考慮されていないことも認め、イノベーションを促進するために有効な規制や制度の設計が重要であることと、そのために規制指標に関するデータ情報の更新、蓄積が必要であることも指摘している。
関連リンク
- 科学技術・学術政策研究所プレスリリース「『規制が企業の研究開発活動に与える影響』の公表について」