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花咲く仕組みを解明、脂質が重要

2014.04.04

 花が咲く仕組みの謎解きが進んだ。リン脂質が開花ホルモンのフロリゲンと結合して花を咲かせていることを、台湾アカデミアシニカ植物及微生物学研究所の中村友輝(なかむら ゆうき)助研究員らが発見し、4月4日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズのオンライン速報版に発表した。切り花や農作物の増産にも将来役立つ発見といえる。

 フロリゲンは葉で合成されてから花芽に移動して作用するタンパク質で、複数の分子と結合して開花を促すと考えられているが、詳しい仕組みは謎だった。中村さんらは、脂質と結合するような部位がフロリゲンの立体構造にあることをヒントに研究した。細胞膜を構成するリン脂質の一種、ホスファチジルコリン(PC)がフロリゲンに結合することを世界で初めて突き止めた。新たに開発した代謝改変技術を用いて、PCの量を花芽の部分だけで増やしたところ、早く咲いた。逆にPCを減らすと、遅く咲いた。こうした開花の調節効果は、遺伝子破壊法でフロリゲンが合成されないようにすると、見られなくなった。

 PCは脂肪酸の分子によって多くの種類がある。中村さんはPCの種類が昼夜で変動していることも見つけた。夜に豊富な分子はフロリゲンと結合しにくいことがわかった。代謝改変技術でこの夜の分子を日中に増産すると、花は遅く咲くようになった。一般に花は夜よりも昼に咲く傾向が強い。それを分子レベルで裏付けた。一連の実験を根拠に、中村さんらは「昼夜で変動するリン脂質がフロリゲンと結合して、花を咲かせるタイミングを決めている」という開花制御の新理論を提唱した。

 開花のタイミングを調節する技術は、鑑賞用の花を一年中安定して供給したり、果実の収穫高を上げたりするのに貢献する。中村さんは「新たに開発した代謝改変技術を使えば、農作物やバイオ燃料、有用物質の大量生産にもつながる」と期待している。この研究はドイツ・マックスプランク植物育種学研究所のジョージ・クープランド教授、ボン大学のピーター・ドーマン教授と共同で行った。

リン脂質のPC量の増加によるシロイヌナズナの早咲き効果。左が野生株、右が花芽の部分だけにPC量を増やした形質転換株。
図1. リン脂質のPC量の増加によるシロイヌナズナの早咲き効果。左が野生株、右が花芽の部分だけにPC量を増やした形質転換株。
フロリゲンとリン脂質のPCの結合による開花制御の新しい理論
図2. フロリゲンとリン脂質のPCの結合による開花制御の新しい理論

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