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デカルトは正しかった! 脳は興奮して記憶再生

2014.03.24

 脳の記憶にかかわるニューロンで興奮性シグナルが強まって記憶が再生されることを、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二(いけがや ゆうじ)准教授らがマウスで発見した。脳が精密な興奮性調節に基づいて記憶を再生することを裏付けるもので、3月16日の米科学誌ネイチャーニューロサイエンスのオンライン版に発表した。池谷准教授は「(17世紀のフランスの哲学者)デカルト(1596~1650年)が洞察した記憶再生の仕組みの謎を365年ぶりに解決した。このデカルトの洞察は本質を突いていた」と発見の意義を強調している。

 一度作られた記憶は、睡眠中や、ぼーとしている時に、脳で自然に再生されることが知られている。しかし、脳がどのように記憶を再生するかはよくわかっていなかった。池谷准教授らは、記憶に関係するニューロンと、無関係なニューロンを区別できる遺伝子改変マウスで研究した。同時に多数のニューロンの活動を記録できる「多ニューロン画像法」も開発し、この手法を使って脳がどのように記憶の痕跡を再生するかという難問に挑戦した。

 今回、記憶にかかわったマウスの脳のニューロンを蛍光タンパク質で生きたまま標識し、学習後にマウスから海馬を取り出し、記憶を保ったまま脳スライス標本にした。この標本に保存された痕跡から、記憶にかかわるニューロンは、抑制性シグナル(ブレーキ)に打ち勝つほどの大きな興奮性シグナル(アクセル)を受け取って記憶を再生させることが明らかになった。この研究で、脳回路では興奮と抑制が広く均衡しているという従来の定説は覆った。

 池谷准教授は「今回の発見で、記憶の仕組みの解明に大きく前進した。デカルトが最晩年の1949年に著した『情念論』で記憶ができる仕組みを洞察しているが、その洞察こそ、今回発見した現象そのものだった。さすがデカルト、その先見性に感心している。この発見で、認知症や統合失調症など記憶の変調による病気の糸口を探れる可能性もある」と話している。

今回発見した脳のシナプス結合性
図. 今回発見した脳のシナプス結合性。
回路全体の活動レベルを反映した抑制性入力(青色)に対し興奮性入力(下からの太い赤色の矢印)が打ち勝って、記憶は再生される

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