京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授や高山直也助教らの研究グループは、ヒトのES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、増殖の盛んな赤血球の基となる細胞(赤血球前駆細胞)を作る技術を開発したと発表した。安定的な赤血球の輸血供給システムの確立に役立つ可能性があるという。
赤血球は、鉄分子を含むタンパク質(ヘモグロビン)によって体中に酸素を運ぶ働きをしているが、“核”をもたないため、自己増殖することができない。研究グループは、iPS細胞とES細胞それぞれに特定の2種類の遺伝子を入れることで、6カ月以上にわたって安定的に増殖し続ける赤血球の基となる細胞を作り、これを「不死化赤血球前駆細胞」と名付けた。
不死化赤血球前駆細胞は未熟な「赤芽球」だが、2種類の遺伝子の働きを人為的に止めると7日後には、成熟した赤芽球に変化した。赤く色づいたことから、酸素運搬に重要な“ヘム合成”も起きていることが分かった。この状態の赤芽球を、放射線照射で貧血にしたマウスに注入したところ、数日後にマウスの血液中で循環している赤血球のほとんどが、核のない最終段階のヒトの赤血球となっていることが確認されたという。
研究論文“Immortalization of Erythroblasts by c-MYC and BCL-XL Enables Large-Scale Erythrocyte Production from Human Pluripotent Stem Cells”は米科学誌『ステムセル・リポーツ』(オンライン版)に掲載された。