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アホウドリのメスは尖閣諸島出身だった

2013.09.17

 昨年11月に小笠原諸島・聟(むこ)島のアホウドリのつがいに生まれた未受精卵を調べていた山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)は、細胞内のミトコンドリアDNAの解析結果から、このメスが約1900キロメートル離れた沖縄県・尖閣諸島生まれである可能性が高い、と発表した。

 絶滅危惧種にも指定されている国の特別天然記念物アホウドリは、19世紀末に羽毛採取のために絶滅したとされたが、1951年に伊豆諸島・鳥島で、71年には尖閣諸島でも少数の生息が確認された。同研究所や環境省などは鳥島にある営巣地の保全や保護に努めたが、噴火の恐れや地形の風化浸食も進んでいることから、約350キロメートル南方の聟島に繁殖地を作るプロジェクトに乗り出した。

 2008-12年にはアホウドリのヒナ計70羽を聟島に移して飼育し、うち69羽を順に巣立たせた。巣立った若鳥は遠くベーリング海や米国西海岸などまで飛び、3-5年後に再び帰ってくる。その聟島には09年から野生のアホウドリが飛来し、11年からは目印の足環が付いた聟島出身の若鳥が帰還するようになった。

 12年11月14日に、同研究所とNHKが共同で聟島に設置している監視カメラが、オス・メスのつがいと巣の中にある1個の卵の姿を捉えた。オスは08年に巣立った若鳥で、メスは、他の場所からやって来た野生のアホウドリだ。ところがこのメスは、間もなく巣から飛び去り、戻らなくなった。オスだけが2カ月間抱卵し続けたが、ふ化予定の今年1月半ばになっても気配はなかった。そのため同研究所の研究員が卵を回収して調べた結果、卵は未受精卵であることが分かった。

 さらに、同研究所は北海道大学などと共同で、未受精卵のミトコンドリアDNAを解析した。ミトコンドリアは母側から代々伝わる細胞内の小器官で、遺伝的な特徴も母側の系統を示す。これまでの研究でアホウドリの系統は、鳥島生まれのグループと尖閣諸島生まれのグループに大きく分かれることが知られており、今回の未受精卵のメスは尖閣諸島のグループに属することが分かったという。

 東邦大学理学部の長谷川博教授によれば、鳥島のアホウドリの数は12年8月時点で3,000羽ほどに回復しているが、尖閣諸島のものは05年の産卵期時点で300-350羽と推定されるという。しかし尖閣諸島での調査はその後も、進んでいない。

昨年11月、映像で確認されたアホウドリのつがい。手前がオスで、その奥が「尖閣諸島生まれ」のメス。足元にあるのが今回分析した卵。(提供:NHK)
昨年11月、映像で確認されたアホウドリのつがい。手前がオスで、その奥が「尖閣諸島生まれ」のメス。足元にあるのが今回分析した卵。(提供:NHK)

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