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未熟精巣の移植・育成で子ブタ誕生

2013.08.16

 超低温で保存した生後間もない子ブタの精巣をマウスの背中に移植して発育させ、成熟した精子を作らせることに、農業生物資源研究所・動物発生分化研究ユニットの金子浩之上級研究員と菊地和弘上級研究員、麻布大学獣医学部の柏崎直巳教授らの研究グループが成功した。この精子と卵子を顕微授精させて雌ブタの子宮に移植し、正常な子ブタを産ませることにも成功したという。生体からの精液採取が難しい希少家畜種の新たな保存法につながる基盤技術として期待される。

 研究グループは、生後10日ほどの子ブタの精巣組織を約1ミリメートル角に切り、「ガラス化冷却」技術を用いて液体窒素内で超低温保存した。ガラス化冷却では、精巣組織を高濃度の耐凍剤(グリセリンやエチレングリコール)を含む液体に入れ、細胞内の水分を耐凍剤と置換することで、氷晶による細胞破壊を防ぎながら冷却する。

 この精巣組織を140日以上保存した後でも、保存前と同じく、精子の基となる精祖細胞の存在が確認された。さらに組織片約20個を、生まれつき拒絶反応を示さないヌードマウスの背部の皮下に移植したところ精巣組織は発育し、移植後230-350日には多数の精子が作られていた。

 精子を回収し、卵子に顕微授精させて受精卵を作り、8頭の雌ブタの卵管に移植した。その結果、うち2頭が妊娠し、計7匹(雌4匹、雄3匹)の子ブタを出産した。生まれた子ブタは健康に発育し、性成熟にも達したという。

 これまで、ウサギやブタの新鮮な精巣組織をヌードマウスに移植し、採取した精子で産子を得た研究報告はあるが、今回のような超低温保存した精巣組織での成功例は世界でも初めてという。雌側の幼若な卵巣組織でも同様な移植法や成熟法が確立できれば、遺伝資源の保存効果はさらに広がるという。

子ブタの精巣組織の超低温保存とヌードマウスへの移植、さらに顕微授精から出産までの経路
図. 子ブタの精巣組織の超低温保存とヌードマウスへの移植、さらに顕微授精から出産までの経路
ヌードマウスに移植したブタの精巣組織から回収した精子(移植後254日)
写真. ヌードマウスに移植したブタの精巣組織から回収した精子(移植後254日)
(提供:図・写真とも農業生物資源研究所)

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