東北大学サイバーサイエンスセンターとNECは、災害によって通信ネットワーク設備の損壊や接続の混雑が起きても利用できるスーツケース形の「可搬型Wi-Fiアクセスポイント」(無線LAN基地局)と、これらを臨時にネットワーク化して情報を伝達する技術を開発したと発表した。災害時の自治体からの情報配信や住民のコミュニケーションを実現できると期待される。
この技術は、利用者のスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレット端末、パソコンなどから送信された情報をアクセスポイント内に蓄積し、可搬型のアクセスポイントを経由して目的の利用者に近いアクセスポイントに伝達する仕組み。近接する複数のアクセスポイントを自動的にグループ化して伝達経路を制御することで、最大1,000台のアクセスポイント間での通信が可能だ。利用者はメールの送受信もできるという。
開発したWi-Fiアクセスポイントは、平常時は公衆Wi-Fiスポットとして利用し、緊急時にはスイッチを切り替えることで臨時ネットワークにモード変更できる。スーツケース形の可搬型アクセスポイントは、太陽電池パネルやリチウムイオン電池が利用でき、車が入れない場所にも持ち込める。ほかに屋外設置型も開発した。
アクセスポイントでの利用者のネットワーク認証の際には、あらかじめ設定した優先利用者と一般利用者を区別するサーバ機能があるので、災害時の膨大な通信から、自治体、警察、消防などからの緊急通知や情報を優先的に受け取ることができるという。
今回の研究開発は、総務省の「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発(大規模災害においても通信を確保する耐災害ネットワーク管理制御技術の研究開発)」の一環として行われた。