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骨の「形成」「破壊」を同時にコントロールするタンパク質発見

2012.04.19

 健康な骨は、骨の表面にある2種類の細胞=骨を溶解して壊す「破骨細胞」、骨の形成に関わる「骨芽細胞」=がバランスよく働くことで、骨の量や丈夫さ、しなやかさなどを維持し、このバランスが崩れることで骨の疾患が起きるという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の高柳広教授や大阪大学大学院、札幌医科大学などの研究チームは、この2種類の細胞に同時に働くタンパク質を発見した。

 このタンパク質は、神経細胞が神経回路をつくる過程や免疫細胞であるT細胞の抑制作用に関わることで知られていた「Sema3A」。破骨細胞の分化を抑制する活性作用をもつ因子を探すために、細胞や組織で発現している全てのタンパク質を分離、解析して発見した。

 Sema3Aは骨芽細胞で産出され、破骨・骨芽の両細胞にある受容体に作用して、破骨細胞の分化を抑制するとともに骨芽細胞の分化を促進する。さらに破骨細胞の分化に関わるシグナル、運動能に関わるシグナルを抑制することが分かった。

 Sema3Aの機能を失ったマウスを調べたところ、破骨細胞の数と骨の吸収が増えた一方で、骨芽細胞の数と骨形成率が異常に低下し、それに伴って骨髄中の脂肪細胞の数が増え、骨量も著しく減少した。さらに、正常マウスにSema3Aを静脈注射すると骨量が増加した。ドリルで穴を開けたマウスの骨にSema3Aを局所投与すると骨がより早く再生し、卵巣を摘出して骨粗しょう症を起こさせたマウスに投与すると、骨吸収の抑制と骨形成が促進され、骨量の減少が食い止られたという。

 今回の研究成果は、骨粗しょう症や関節リューマチ、骨折などの新しい治療法や診断法などの開発につながるものと期待されるほか、老化して骨量が低下傾向にあるマウスでは血中Sema3A量も低下していることから、Sema3Aが疾患診断のバイオマーカーとして利用できる可能性があるという。18日(日本時間19日)、英科学誌「ネイチャー」(オンライン版)に掲載された。

 研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「高柳オステオネットワークプロジェクト」(2009-2014年度)の一環として行われた。

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