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ヒトの二足歩行は一度にものを運ぶ必要から

2012.03.23

 ヒトが二足歩行になったのは、限られた食料などを一度にたくさん運ぼうとする際に都合がよかったから、という新説を、日本、英国、米国、ポルトガルの国際研究チームが米学術誌「カレント・バイオロジー」に発表した。

 松沢哲郎・京都大学霊長類研究所教授と英ケンブリッジ、オックスフォード両大学の研究者を中心とする共同チームによる二足歩行の運搬起源説は、ギニアでの二つの研究成果に基づいている。一つの研究は、ボッソウ森林での野外実験場で、どこにでもあるナッツと手に入らない貴重なナッツを並べ、チンパンジーの行動を観察した。貴重なナッツがほんの少量しかない場合、チンパンジーはどこにでもあるナッツを無視して、貴重なナッツだけをできるだけ自分の物にしようとする。両手とさらには口まで使って一度にたくさんのナッツを運ぼうとする結果、二足歩行になることが多くなる。どこにでもあるナッツを運ぶ時に比べ、二足歩行になる頻度は4倍に増えることが分かった。

 もう一つの研究成果は、同じボッソウで、英オックスフォードブルックス大学のホッキングス博士によって得られた。チンパンジーが畑の作物を盗む際の行動を観察した結果、35%は二足歩行ないしそれに近い動きをしており、こちらも一度にたくさんの物を運ぼうとしているためと考えられた。

 食物その他の資源を争って手に入れなければならない環境変化によって二足歩行の必要が増え、世代を重ねる中でそれが常態化したと考えられる、と研究チームは言っている。

 ヒトの二足歩行は、気候変動によって森林が後退し、開けた場所を長距離移動しなければならなくなったため、という説がこれまで有力だった。

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