原子力発電所がすべて停止した場合の経済影響について相反する試算結果が、特定非営利活動法人と財団法人から公表された。
6月22日に開かれたエネルギー・環境会議の初会合で海江田万里・経済産業相が提出した資料によると、現在運転中の原子力発電所が定期検査に入り、停止中の原発の再稼働がないとすると来年5月には国内で動いている原発はゼロになる。
特定非営利活動法人「気候ネットワーク」は1日、「追加試算『すべての原発が停止する場合の影響について』」を公表し、「原発が全停止しても、現在の設備で夏のピーク対応も基本的に可能」とした。一般家庭の電力料金への跳ね返りについても「省エネとLNG への代替をしていけば小さくて済み、月1,000 円もの負担をすることはない」と言っている。
一方、財団法人「日本エネルギー経済研究所」(理事長は元経済産業省経済産業審議官)は、6月24日に発表した「特別速報『原子力発電の再稼働の有無に関する2012年度までの電力需給分析』」で、全く異なる試算結果を明らかにしている。それによると、来年夏には「長期停止火力発電所を除く電気事業者の発電能力が最大電力を7.8%下回り、特に産業活動には甚大な影響が避けられない」という結論になっている。火力発電量を増やす結果、石炭、LNG、石油燃料費が今年に比べて3.5兆円増加し、標準家庭で月1,049円(18.2%)の電力料金の負担増となり、産業用電力料金も36%上昇する、としていた。
両者の結論が大きく異なった理由について気候ネットワーク側は、日本エネルギー経済研究所の試算が、電力量について猛暑だった昨年夏あるいはリーマンショック前の好況時の最大値を用いる「過大な需要想定」と、揚水発電所は動かさないなど「過小な供給力想定」によって導き出されているため、などと指摘している。