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高線量被ばく患者の腸障害にタンパク同化ステロイド剤が効果

2011.04.25

 骨粗しょう症の治療などに既に使われているタンパク同化ステロイド剤が、高い放射線量を被ばくした後で発生する腸障害を回復させる効果があることを、放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センターの研究チームが発見した。

 このタンパク同化ステロイド「ナンドロロン(19-ノルテストステロン)」は骨格筋を増強する作用があり、ドーピング剤としてスポーツ選手の使用が禁止されている。しかし、男性機能の低下や骨粗しょう症、重いやけどなどの治療薬として使われており、安全性や副作用は十分分かっている。動物実験で効果が確かめられた段階だが、高放射線被ばく患者の腸障害に対する薬として効果が期待できる、と研究チームは言っている。

 緊急被ばく医療研究センターの石原弘・障害治療研究チームリーダーと明石真言センター長らは、半数を死亡させるほどの強い放射線をマウスの腹部に当て、24時間後にナンドロロンを投与した。ナンドロロンを投与されたネズミの生存率は37%向上し、被ばく5日後に小腸を検査したところ粘膜細胞の数が23%増えていることも確認された。

 放射線医学総合研究所によると、被ばく事故などで高線量の放射線が腹部に当たると、小腸の粘膜が次第に消滅する腸障害が起き、被ばく線量が著しく高いと腸粘膜からの出血が止まらず死に至る。これまで被ばく前に投与すると障害を抑えられる治療法はあったが、被ばく事故が発生した後に使用しても効果がある治療法はなかった。

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