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虫歯原因酵素の立体構造解明

2011.02.18

 虫歯の原因となる酵素「グルカンスクラーゼ(GSase)」の立体構造を静岡県立大学の伊藤 圭祐・助教、伊藤 創平・助教らが突き止めた。

 GSaseは、砂糖を粘着性の多糖であるグルカンに変える働きをする。このグルカンが食べかすや口腔(こうくう)細菌を巻き込んで歯垢(しこう)をつくり、歯垢内で口腔細菌が増殖し、口腔細菌がつくる酸が虫歯を進行させる、という関係が分かっている。しかし、GSaseが特に変わった酵素ではないことが逆に災いし、GSaseの働きだけを阻害する薬の開発が難しかった。

 伊藤助教らは、まずこれまで難しかった均質なGSaseを大量につくり出すことに加え、界面活性剤を利用する方法で結晶化することにも成功した。これによってエックス線結晶構造解析が可能となり、GSaseの立体構造を解明した。立体構造が分かると、GSaseに結合して、その働きだけを阻害する物質を探し、あるいはつくり出す道が開ける。

 GSaseがつくる歯垢は虫歯だけでなく、口臭や歯周病、誤嚥(ごえん)性肺炎の原因ともなることから、今回の成果はより効果的な虫歯を予防する物質の探索だけでなく、予防医学的観点からも重要だ、と研究チームは言っている。

 この成果は、阿部 啓子・東京大学大学院農学生命科学研究科 特任教授、岩田 想・科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究「岩田ヒト膜受容体構造プロジェクト」研究総括(京都大学 大学院医学研究科教授)、島村 達郎・同研究員(京都大学大学院医学研究科客員研究員)との共同研究で得られた。

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