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反応効率100%究極の光センサー分子開発

2011.01.12

 反応効率が100%という究極の光センサー分子を、奈良先端科学技術大学院大学の河合 壯 教授、中嶋 琢也 准教授らが開発した。人間や動物などの視覚細胞に比べ感度は約1.5倍に相当し、高感度光センサーや光記録ディスクの高効率化によるパソコンの低消費電力化などへの応用が期待できる、と研究チームは言っている。

 人工の光センサー分子(フォトクロミック分子)は、既に光着色型サングラス用の着色色素として利用されている。さらにジアリールエテンやターアリーレンと呼ばれる分子は、光が当たったことを長期間記憶する記録保持性能に優れているためDVD(デジタル多用途ディスク)やブルーレイディスクなどに代わる次世代ディスク型記憶媒体用の光記録材料として注目されている。

 河合教授らが開発したフォトクロミック分子の特徴は、磁石のようにくっつきやすい役割をもつ原子(硫黄原子と窒素原子、窒素原子と水素原子)を複数導入していること。これによって分子の構造を平面状態に固定化することが可能になった。これまでの人工フォトクロミック分子の反応効率が低いのは、ねじれやひずみのある構造の間で一定の形を取らないことが原因、と考えたことに基づく。

 新しく開発されたフォトクロミック分子は、従来の人工フォトクロミック分子で50%程度にとどまっていた反応効率を一挙に100%に高めた。人間や動物の視覚も、レチナールという分子がオプシンと呼ばれるタンパクと結びつくことで安定な平面構造を保っているが、反応効率は約65%。視覚細胞に比べても光に対する感度(反応効率)は1.5倍高いことになる。記録材料として用いる場合には従来の100倍以上の省エネルギー化が可能になる、と研究チームは言っている。

 この成果は、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「フォトクロミズムの攻究とメカニカル機能の創出」(領域代表者:入江正浩・立教大学 教授)と奈良先端科学技術大学院大学NAIST先端的研究連携事業の一環として得られた。

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