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DVDの書き換え機能原子レベルで解明

2008.03.14

 書き換え可能なDVDの表面で起きる瞬間的な変化を原子レベルで観察することに、高輝度光科学研究センターなどの研究グループが初めて成功した。より高性能の光記録材料開発につながる成果と期待されている。

 書き換え可能なDVD-RAMは、大容量のデータを記録できる材料として今や生活に欠かせないものとなっている。光記録材料であるGe2Sb2Te5が松下電器の研究開発陣によって提案されて以降、研究開発が急速に進んだ。光記録材料でつくられたメモリ薄膜にレーザーをあてて、情報の記録、再生を行う仕組みになっている。レーザー照射された部分は瞬間的に原子配列が大きく乱れる液体状態となった後、急冷却され、アモルファス(非晶質)となる現象を利用して情報を記録する。消去する場合は、小さな強度のレーザーをあてて原子を再配列させ、書き換えが可能な状態に戻す。

 ただし、この変化はナノ秒という瞬間的な時間で起きることから、原子レベルで直接観測することはこれまでできなかった。

 高輝度光科学研究センター、科学技術振興機構、理化学研究所、松下電器、筑波大学の研究者たちは、大型放射光施設(Spring-8)のX線放射光を利用し、メモリ薄膜で瞬間的に起きている原子レベルの変化を観察するシステムを作り上げた。

 Ge-Sb-Te系とAg-In-Sb-Te系という2つの代表的材料で観察した結果、レーザーをあてて約100ナノ秒後に急激に結晶化が進み、300ナノ秒後にはほぼ結晶化が完了している様子が分かった。また、Ge-Sb-Te系材料では、初めに比較的大きな結晶核ができ、その数が徐々に増え、全体が結晶粒で占められるという変化が見られたのに対し、Ag-In-Sb-Te系では、初めに細かな結晶粒が多数でき、それがつながって、全体が埋め尽くされた後、さらに結晶粒同士が融合して結晶粒が大きくなっていくという興味深い違いが観察された。

 こうした結晶成長プロセスの特徴が観察できたことで、より高性能の次世代光記録材料の探索・設計に貴重な知見が得られた、と研究グループは言っている。

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