過剰に分泌されるとリウマチ関節炎や多発性硬化症などの自己免疫疾患を引き起こすタンパクに結合し、その働きを抑えてしまうリボ核酸(RNA)分子の開発に東京大学の研究グループが成功した。
特定の分子だけを標的とする新しいタイプの薬(分子標的医薬)が期待できる成果だ、と研究グループは言っている。
東京大学医科学研究所の中村義一教授と石黒亮・特任助教らが標的としたのは、慢性関節リウマチ、多発性硬化症のほか気管支ぜんそく、炎症性腸疾患などの病気を引き起こすことが知られていたインターロイキン17というタンパク。まず、さまざまな塩基配列を持つRNA分子を作成し、SELEX法と呼ばれる魚釣りを思わせる手法でインターロイキン17の活性を強く抑え、かつ副作用の少ないRNA分子を見つけ出した。
ヒト多発性硬化症のモデルマウスによる実験で、病気の発症を強く抑え、発症したマウスでも極めて軽微な症状にとどめる効果が確かめられた。また、リウマチ関節炎のモデルマウスでも発症の抑制と軽微な症状が観察され、発症後に投与すると早期回復が確認された。
分子標的医薬は、特定の細胞、それも細胞の外側にあるタンパクやその受容体を標的にするため副作用の心配がなく、抗体に代わる次世代の医薬として期待されている。
この成果は科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「生命現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」の一環として得られた。