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断層両側で異なる地殻の動き「だいち」が観測

2008.05.22

 国土地理院は、陸域観測技術衛星「だいち」が20日に観測した中国四川省の地震被災地のデータから、地震を起こした断層周辺の動きをとらえた画像を21日公表した。

 この画像は、「だいち」に搭載された合成開口レーダで20日に観測したデータと、地震前の2月18日に同じ地域を観測したデータの比較から、地盤の変動を明らかにしている。解析結果から、「震央から北東に約140キロ離れた北川県(ペイチョワン)周辺においても、南北100キロを超える範囲で地震に伴う明瞭な地殻変動が見られる」と国土地理院は言っている。

 また、四川盆地と北側の山岳地帯との境界地域に変動が集中しており、さらに余震の分布と併せると、この付近に震源断層があることを示しているとしている。

 「だいち」による同じ観測データに基づく画像は、宇宙航空研究開発機構も20日に公表している(2008年5月21日ニュース「断層挟み複雑な地殻変動『だいち』が観測参照」)。この記事中「画像を見る限り、断層の南側全体が衛星に向かって近付いている(隆起した)わけではなく、逆に沈下したところと隆起したところが波状に見られ、地殻変動の様子は複雑だったことがうかがわれる」としたのは、編集者の誤解によるものだった。おわびした上で、この部分を撤回する。

 以下、国土地理院の飛田幹男・地殻変動研究室長に取材した結果に基づき、合成開口レーダによる画像の読み方について記す。

 宇宙航空研究開発機構の画像においても、赤=隆起、紫=沈下を意味してはいない。理由は、「だいち」から得た合成開口レーダによるデータはその地域を真上から見たのではなく西上から見たもので、観測した地点が衛星に近づいたか遠ざかったか、ということを示すに過ぎないからだ。従って、「断層の南側で50〜60センチ地面が衛星に向かって近付いている」(地殻変動)」という宇宙航空研究開発機構の発表は、それ以上のことは意味してなく、断層の南側が隆起したとまでは言えない。さらに色の変化が波状になっているのも、衛星に近づいた地域と遠ざかった地域が交互に存在することを示すものではない。一つ一つのサイクルが衛星からの距離の変化を表しているだけで、その地域一帯の動きは、色の変化の分布図全体からしか判断できない。

 国土地理院の画像で説明すると、まず、断層から一番遠い左上端と右下端の青い部分を地震による地殻の変化があまりなかった地点とみなす。断層方向に向かって青の次に赤が来るパターンの所は、その地点が衛星から遠ざかったと解釈できる。青の次に黄色が来る場合は逆に衛星の方向に近づいたと見る。また再び青が来るまでは1つのサイクルとなっており、その変動値は約12センチ。

 断層の北側には「青の次に赤」のパターンが5サイクル程度繰り返しているのが見て取れるので、この地域は12×5=60センチくらい衛星から遠い方向つまり東方向に動いた。他方、断層の南側は「青の次に黄」のパターンが7〜8サイクル見られるので、1メートル程度、逆に西の方向に動いた、と見ることができる。

 今回の地震は、断層の北西側の地層が、南東側の地層に向かってずり上がる逆断層ということがほぼはっきりしている。断層の北西側が隆起し、南東側が沈下したはずだが、断層のすぐそばの地殻の動きは、変化が大きすぎて観測データが得られなかった。ただ断層に近い一部に、色の変化のパターンから断層北西側が隆起したと解釈できる場所が見られる。全体としては、断層が右横ずれ(断層の北側が右、南側が左方向に動く)の動きもした可能性が指摘されていることと、逆断層によって断層両側の地殻は断層に近づく動きをすることを考えれば、今回の観測結果は、地震による被災地周辺の地殻変動を十分説明できる。

「だいち」合成開口レーダによる地殻変動分布図
「だいち」合成開口レーダによる地殻変動分布図
青と次の青までの1サイクルが約12センチの変動を表している
(提供:国土地理院)

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