26日未明、石川県能登地方で最大震度5弱を記録する地震が起きたが、発生直後の震度解析値が実際よりわずかに小さかったために、緊急地震速報は発信されなかった。
地震発生は、26日午前4時33分ごろで、震源は石川県能登地方(輪島市付近)でマグニチュードは4.4と気象庁から速報された。震源、マグニチュードの精度は問題なかったが、結果的に「5弱」だった震度が発生直後の観測値解析では「4」以下。昨年10月1日にスターとした「緊急地震速報」サービスでは警報発信基準(震度5弱以上)にあたるケースだったが、結局、「緊急地震速報」は流されなかった。
緊急地震速報は、「地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを解析して震源や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を推定し、可能な限り素早く知らせる情報」と説明されている。地震が起きた場合、伝わる速度の速いP波の後に大きな揺れ(主要動)であるS波が襲ってくる。震源に一番近い観測地点でP波をキャッチした時点で、警報を流せば大きな揺れが来るまでのわずかな時間を利用して緊急対応が可能、という考えに基づいたシステムである。
一方、現時点においては、いくつか今後改良を図るべき問題を抱えており、今回は「震度推定の精度に限界がある」と当初から気象庁が公的に認めていたシステムの性格もあらわになった。
また、仮に地震発生直後の観測で「5弱」という正確な震度が予測された場合でも、震源に近い輪島市付近では、現実に緊急対策をとれる時間的な余裕はなかった。
緊急地震速報システムは、気象庁と防災科学技術研究所が共同で開発したが、現時点ではまだ「震度はプラスマイナス1程度の誤差がある」(2007年10月15日インタビュー・岡田義光氏・防災科学技術研究所理事長「役に立つ地震学目指して」3回目「不確かさを社会に伝える努力も」参照)と言われていた。
また、P波の到達を震源近くでキャッチし、S波(主要動)が到達するまでの時間差を利用するという基本的な性格についても「地震の震源に近いところは犠牲にして、遠いところは助けようという矛盾を抱えたシステム」(同「2007年10月15日インタビュー記事」参照)であることが、今回の地震で一般の人々にも明らかになった、とみられる。