再生医療の切り札になるのでは、との期待が高まっているヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の研究活動を支援するため、科学技術振興機構は急きょ、特別シンポジウムを25日に京都で開催することを決め、公表した。
「多能性幹細胞研究のインパクト−iPS細胞研究の今後」と題する特別シンポジウムは、25日午前10時から夕方まで、京都センチュリーホテルで開かれる。iPS細胞に加え、同じく万能細胞の有力候補として早くから関心を集めている胚性幹細胞(ES細胞)の研究者たちも講演者に招く。ヒトiPS細胞の作成や動物のiPS細胞を用いた再生応用の実験についての詳しい報告をもとに、多能性幹細胞分野についての議論を深め、今後のiPS細胞研究の方向を示すことを狙っている。
iPS細胞研究は、山中伸弥・京都大学教授が切り開いた分野で、山中教授は昨年8月、世界で初めてマウスの細胞でiPS細胞を作り出すことに成功、さらに先月にはヒトの皮膚細胞から作り出すことにも成功している。しかし、米国をはじめとする海外の研究チームも相次いでこの分野へ参入しており、先週、米国の研究チームが早くもマウスでiPS細胞の治療効果を確かめた動物実験結果を発表するなど競争激化が明白になっている。
日本国内でも28日の総合科学技術会議で福田首相が、研究支援の在り方について検討を指示したほか、渡海文部科学相も研究支援の考えを早々と表明するなど、iPS研究に対する関心は急激に高まっている。科学技術振興機構は、戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST))「免疫難病・感染症等の先進医療技術」研究領域における研究課題の一つとして、山中教授への研究支援をしている。しかし、これでは不十分として、今年度中に研究者の増強に加え、研究管理、知財関係の担当者を派遣するなどの検討を始めている。
一方、山中教授も7日、渡海文部科学相と岸田科学技術政策担当相に会い、早急な研究態勢の拡充、強化を訴えた。