レビュー

「はやぶさ君」効果

2010.11.19

 小惑星探査機「はやぶさ」が多くの人の感動を呼んだことは、議論するまでもないことだろう。回収カプセルの中に小惑星「イトカワ」の可能性が高い微粒子多数が見つかったとの新たな発表に対し、新聞各紙は大きなニュースとして報じたのに続き、17日あるいは18日の社説でも相次いでこれを取り上げた。見出しを並べてみる。

 「天からの贈り物だ」(毎日新聞)、「世界初の偉業を未来に生かせ」(読売新聞)、「あっぱれを、次の宇宙へ」(朝日新聞)、「世界へ『はやぶさ』効果を」(産経新聞)、「科学の自信取り戻そう」(東京新聞)となっている。

 毎日と朝日の記事中に「はやぶさ君」という愛称が出てくるように、「はやぶさ」プロジェクトに対しては科学的な評価に加え、共感がにじみ出ているのが、どの社説にも共通しているように読める。

 当サイトは、17日のニュース「『はやぶさ』カプセルに小惑星の微粒子確認」で伝えたが、1人の読者からこれら社説の論調とはだいぶ異なるコメントが寄せられた。過去の関連記事として付記した7月15日付けレビュー「『はやぶさ2』プロジェクトは挑戦的か」も読んだ上でのコメントと思われるため、そのレビュー記事の下欄にある読者コメント欄に掲載させていただいている。

 このコメントには賛同できない人も相当いそうだが、末尾に次のように書かれているのが目を引く。

 「派手に目立つからといってマスコミの視聴率競争利用して税金であたかも子供の夢まで買えますみたいにごまかして使い続けるより、もっと地道で堅実なプロジェクトや研究者にチャンスを与えたら?」

 「『はやぶさ2』プロジェクトは挑戦的か」というレビュー記事は、「はやぶさ2」が本当に挑戦的なプロジェクトかどうかという議論はないのだろうか、とやんわり問題提起した記事である。記事掲載後すぐさま「はやぶさ2は挑戦的である」という明快なコメント、あるいは「意味のあることをするには1回では済まない。『はやぶさ』に対するような熱狂も不要」といった冷静なコメントなどが寄せられた。

 今回の厳しい評価も含め、これらサイエンスポータル読者からの数少ないコメントから伺えるのは、「はやぶさ」に対する見方は結構いろいろあるらしいということではないか。新聞各紙の社説とはちょっと異なり…。

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