レビュー

日本は世界を向いているか

2008.12.09

 米科学誌「サイエンス」11月21号の論説欄に、「世界に向けた日本へ」という黒川清 氏・政策研究大学院大学教授(前内閣特別顧問)の記事が載っている。

 黒川 氏はこの中で、「今日のグローバル競争においては、型破りな才能を持つ、進取の気性に富んだ人材が求められ」、さらに「いずれの国にとっても、科学、技術、イノベーションへの投資は、国の経済成長にとって極めて重要」であることを強調している。

 人材、リーダーの育成に大学が重要な役割を担うことを指摘し、政府が科学教育・研究に対する支援を行っても「将来を担うべき学生の可能性を十分に伸ばしきれていない」日本の大学の現状に厳しい目を向けている。

 さらに、「世界の最も有望な学生を引き寄せるばかりでなく、トップレベルの人材を教授に、さらには学部長、学長、総長などのポストに招聘している」海外の主要大学の動きを挙げて、大学が世界に門戸を開くことの重要性に言及、トップに外部から人を招くことが依然として例外的でしかない日本の大学に警鐘を鳴らした。

 「日本とアフリカの大学・研究機関の教員、学生が参加する二国間共同研究プロジェクト」と、「主要大学30校を対象に、全学生の少なくとも1割を今後5年以内に海外へ交換留学させることを目標とする交流プログラム」が2009年度予算案に盛り込まれていることに期待を表明し、これらが承認されないと日本が「150年前、ペリー提督が日本の扉を世界に開いた以前の時代に戻るのではないかと心配だ」と結んでいる。

 黒川 氏は、日本学術会議会長、内閣特別顧問を歴任し、この間、日本が国際化を急ぐ必要性を一貫して主張している。今回の論説の中でも、日本の国立大学約80校中、女性の学長がお茶の水女子大学だけにしかいないことや、海外へ留学する学生の数が米国だけを見てもここ数年で46,000人から35,000人に急減しているといったデータを示し、日本社会にはびこる「島国精神に満ちた、階層的タテ構造の男性優位な社会システム」を批判している。

関連記事

ページトップへ