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新型コロナ拡大続く中、米国や英国などの3ワクチンが治験の最終段階

2020.07.30

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界規模で拡大が続いている。そうした中で米国と英国のほかドイツの企業も参加する3つのワクチン開発が最終段階に入った。米バイオテクノロジー企業モデルナと米製薬企業ファイザーはそれぞれ27日、米国内で約3万人を対象にしたワクチンの3段階ある臨床試験(治験)最後の第3相試験を始めたと発表した。英製薬企業アストラゼネカのチームも既に治験の最終段階に進んでいる。

米バイオテクノロジー企業モデルナのホームページ
米バイオテクノロジー企業モデルナのホームページ

 モデルナによると、同社は米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)と共同で開発したワクチンの第3相試験を、米国内約90の医療機関で約3万人を対象に行う。第3相試験で最終的に有効性と安全性が確認された場合、年間5億〜10億回分の生産を目指すという。

 同社は3月に小規模で行う臨床試験の第1相試験を実施。この成果を受けて5月下旬から6月初めにかけて約600人を対象にした第2相試験を始めた。今回第2相試験でも成果を確認したとして、大規模な第3相試験を始めることを決めたという。

 同社のワクチンはウイルスの遺伝情報の一部を利用するメッセンジャーRNA(mRNA)を利用したワクチン「mRNA-1273」。同社は26日にワクチンの早期実用化を目指す米政府の「ワープスピード作戦」で最大5億ドル近い追加資金を受けると発表。これまでも同規模の支援を受けている。

 またファイザーと、独バイオテクノロジー企業ビオンテックも27日、共同で開発中のCOVID-19のワクチンについて、約3万人を対象にした大規模治験を始めたと発表した。

 ファイザーによると、2社が開発したmRNAワクチン「BNT162b2」について、18〜85歳の計約3万人に2回投与し、安全性と、感染や発症の予防に有効かどうかを評価する。半数は比較のため偽薬を接種する。米国内のほか、アルゼンチン、ブラジル、ドイツなど世界の約120の医療機関で実施する。安全性や有効性が確認できれば、10月にも米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可の審査を受け、今年末までに最大1億回分、来年末までに13億回分の製造を目指すという。

 アストラゼネカは英オックスフォード大学と共同で開発したワクチンを接種した人に、感染を防ぐ抗体ができたとする臨床試験の中間結果を英医学誌ランセットに20日発表した。英国内で1077人の健常者を対象にした治験で約9割に中和抗体反応が確認でき、多くの人に発熱や頭痛などの症状は出たものの、深刻な副作用はなかったという。既に英国やブラジルなどで治験の最終段階に進んでいる。

 世界保健機関(WHO)によると、世界では170種類近いワクチン開発が進み、うち20種類以上については治験が行われているという。この中には大阪大学発の創薬ベンチャー「アンジェス」(大阪府茨木市)が同大学と共同開発した「DNAワクチン」の治験も含まれる。アンジェスは6月30日に大阪市立大学医学部附属病院で第1相試験を始めている。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)

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