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新型コロナ感染を最短40分で判定 東大、ゲノム編集による迅速診断法を開発

掲載日:2020年6月4日

東京大学医科学研究所の研究グループは3日、ゲノム編集技術を応用して新型コロナウイルス感染の有無を最短40分で判定できる手法を開発したと発表した。同グループによると、試薬と試験紙を使う簡単な手法で、現行のPCR検査よりも短時間で陽性か陰性かの結果が判明するという。やはり短時間で結果が分かる抗原検査より精度が高いため、医療現場で迅速診断法として活用できそうだ。

試験紙上に現れた検査結果、赤い矢印部分が陽性であることを示している(東京大学医科学研究所提供)
試験紙上に現れた検査結果、赤い矢印部分が陽性であることを示している(東京大学医科学研究所提供)

ゲノム編集は遺伝子改変技術の一種で、従来の遺伝子組み換え技術と異なり、狙った遺伝子を正確に改変できる。2012年に「クリスパー・キャス9」という手法が開発されてから、簡単にこの技術が使えるようになり、農業や医療の分野などでの応用が広がっている。

東大医科研究所先進動物ゲノム研究分野の吉見一人講師、真下知士教授らは、同研究所感染症分野、ウイルス感染分野や理化学研究所放射光科学研究センターと共同で、これまでも研究対象だったゲノム編集を使って、人体に新型コロナウイルスがあるかどうかを調べる手法を研究した。吉見講師らは、新型コロナウイルスなど、ウイルス遺伝子の特定部分を切断できるよう設計した高分子システムを利用。このシステムが働くと分かる別の遺伝子を「目印」として高分子と一緒に交ぜる仕組み(CONAN法)を考案した。ウイルスの遺伝子が切断されたことを試験紙上に現れた目印で判定し、間接的にウイルスの存在を確認する手法だ。

研究グループが開発した迅速診断法の仕組みの概念図(東京大学医科学研究所提供)
研究グループが開発した迅速診断法の仕組みの概念図(東京大学医科学研究所提供)

研究グループによると、この手法はウイルス量が微量でも判定できるため、試薬と試験紙、保温装置があればよい。患者や健常者に鼻腔の奥をぬぐった検体を提供してもらってこの手法の効果を調べた。その結果、10人の陽性患者のうち9人を陽性と判定、21人の陰性者の20人を陰性と判定した。これは現行のPCR検査の検出感度と同程度という。

検体に含まれるウイルスは通常数十個程度しかないため、現在は少ない数のウイルスでも高感度に検出できるPCR検査が主に利用されている。しかし、PCR検査は専門的技術や解析機器が必要なために臨床現場で実施することが難しく、特定の検査機関で実施され、検査時間は4~6時間から場合によっては1日かかる。一方、抗原検査は30分程度で結果が分かるが、検出感度の低さが問題だった。

開発された迅速診断法と従来のPCR検査、抗原検査、抗体検査との比較概念図(東京大学医科学研究所提供)
開発された迅速診断法と従来のPCR検査、抗原検査、抗体検査との比較概念図(東京大学医科学研究所提供)

米メディアによると、米国ではバイオベンチャー企業がやはりゲノム編集を使った検査手法を考案して、最近米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を得ている。東大医科研のグループは、同グループや大阪大学が中心となって昨年開発した「クリスパー・キャス3」を使っているため、国内の承認が得られれば国産の迅速診断法として広く活用できる。またウイルスや細菌のどのようなDNA配列でも、さまざまな感染症の遺伝子診断法として利用することができるという。

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