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「一般の患者6%陽性」、高い市中感染率をデータが示唆 厚労省が抗体、抗原検査で流行状況把握へ

掲載日:2020年4月24日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以外の一般患者の約6パーセントが感染しており、市中感染を反映している可能性がある、と慶應義塾大学病院が発表した。サンプル数は少ないが、実際の市中感染率は都道府県別に公表される感染者数から割り出される感染率より高い可能性があることを示唆するデータだ。厚生労働省は正確な流行状況を把握するため、新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査の実施を決めた。またこれとは別に感染の有無が早く分かる抗原検査も導入する方向で検討している。

日本国内の感染者数は23日現在、クルーズ船の乗員乗客を含めると約1万3000人を超え死者も約340人になった。このうち東京都の感染者は3600人近くを数え、10日連続で100人を超す感染者数が発表されている。しかし、PCR検査数が少ないことから正確な市中感染率が分からず、拡大防止対策のための基礎データにならない、との指摘が多く出されていた。

こうした中で慶大病院は21日に「4月13日から19日までの間に新型コロナウイルス感染症以外の病気で入院する予定の患者67人にPCR検査をしたところ5.97パーセントにあたる4人が陽性だった」とホームページで発表。「市中で感染したものと考えられ、地域での感染状況を反映している可能性がある」との見解を示した。4人はいずれも新型コロナ感染症の症状は全くなかったという。陽性となった調査対象が患者67人と少ないことなどから本格的な疫学調査とは呼べないが、「約6パーセント」という数字は毎日全都道府県別に公表される感染者を人口で割った数値より桁違いに高い。このため多くの医療関係者に衝撃を与えた。

厚労省は既にPCR検査を増やす方針を決めているが、国の緊急事態宣言による感染拡大防止効果を測るためにも、より正確な市中感染率を調べる必要に迫られていた。一つの参考データとはいえ、慶大病院による一般患者の感染率が出されたこともあり、同省は23日までに新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査を実施する方針を決めた。

米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)
米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)

抗体は、人体内に侵入したウイルスから体を守るために作られるタンパク質。抗体検査は血液を採取して調べるが、抗体の有無で過去に感染したどうかが分かる。厚労省は新型コロナウイルスの抗体検査は数千人規模を目指し、東京都のほか東北など地域ごとに実施する方針だ。加藤勝信厚労相は21日に今月中に検査を始める意向を示し、菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で、献血血液を用いて複数の検査キットの性能試験を始めることを明らかにした。有用性を確認次第、本格的に抗体検査を行う予定だ。 同省関係者によると、性能試験は既に東京都で始まったという。

厚労省関係者によると、同省はこの抗体検査とは別に、新型コロナウイルスを患者の検体から短時間で簡単に検出する抗原検査の導入を検討している。新型コロナウイルス特有のタンパク質に特異的に付着する物質を使い、検体中のウイルスの有無を調べる仕組み。インフルエンザ検査のように鼻の奥の粘液を取ってその場で抗原の有無、つまり感染の有無を判定できるキットを使う。

横浜市立大学の研究グループ(同大学大学院医学研究科の梁明秀教授らで構成)は20日、患者の検体から新型コロナウイルスを15~30分の短時間で検出できるタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質に対するモノクローナル抗体、抗NP抗体)の作製に成功し、国産初の抗原簡易検査キットの開発を目指している、と発表している。

横浜市大のほか、民間企業も検査キットを開発済みか開発中でいずれも短時間で結果が分かるという。厚労省はなるべく早く、できれば5月ごろの薬事承認を目指しているという。

抗体と抗原はまぎらわしいが異なる。抗原は免疫細胞上の抗原受容体と結合し、免疫反応を起こす物質の総称。ウイルスや細菌のほか、ワクチン中のタンパク質も抗原になる。抗原から体を守るために作られる抗体は、体内で増えるまで時間がかかるため感染初期に検出できないが、抗原の有無は感染初期でも検出が可能だ。

横浜市立大学が作製に成功した新型コロナウイルスの抗原検査に使える抗NP抗体の概念図(横浜市立大学提供)
横浜市立大学が作製に成功した新型コロナウイルスの抗原検査に使える抗NP抗体の概念図(横浜市立大学提供)

米メディアなどによると、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は23日の記者会見で、新型コロナウイルス感染歴の有無を調べるため無作為抽出で行った抗体検査の結果、約14パーセントが陽性だったことを明らかにした。ニューヨーク市内では約21パーセントに上ったという。検査対象者は一般市民3000人。州の感染者は公式発表の10倍の推定約270万人に増える可能性があり、日本国内の検査結果が待たれる。

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