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「早ければ2030年にも1.5度上昇し、自然災害リスク高まる」 IPCCが特別報告書

掲載日:2018年10月10日

地球温暖化が現在のペースで進むと早ければ2030年にも世界の平均気温は産業革命前より1.5度上昇し、豪雨被害などの自然災害のリスクも高まる―。こう予測する特別報告書を国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が8日公表した。地球温暖化対策の国際枠組である「パリ協定」は、産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える目標を掲げているが、協定ができた後も温室効果ガス削減に向けた各国間交渉は難航している。12月にはポーランドで国連気候変動枠組条約締約国会議(COP24)が開かれる。膨大で詳細なこの特別報告書は早ければあと十数年で現在よりも深刻な気候変動が顕在化する可能性を指摘し、世界各国に警告を与えた形だ。

画像1 特別報告書の表紙(IPCC提供)
画像1 特別報告書の表紙(IPCC提供)

特別報告書は「1.5度の地球温暖化」と題し、6日まで韓国・仁川(インチョン)で開かれていたIPCC総会で受諾された。報告書はまず、世界の平均気温は産業革命前よりすでに約1度上昇しており、気温上昇が現在のペースで進むと2030年から52年の間に現在より1.5度上昇すると予測した。その上で気温が1.5度上昇した場合と2度上昇した場合の影響を比較し、1.5度の場合は2度の場合よりも影響の程度は低くなるとしながらも、それでも自然や生態系などに影響し、人間が居住するほとんどの地域で極端な高温が続く可能性が高いなどと具体的な影響を列挙した。そして気温上昇を1.5度に抑える努力が重要でそのためには人為的な二酸化炭素(CO2)の排出量を2010年比で30年に約45%減少させ、さらに50年前後に実質ゼロにする必要がある、と強調している。

ここ数年、世界各国で異常気象に伴う被害が報告されているが、報告書は世界の豪雨について、2度でも1.5度でも世界の多くの地域で豪雨が増えるものの、1.5度に抑えることにより、豪雨のリスクを低減できると指摘した。この分析には日本を含む当南アジアも対象になっている。干ばつの被害も2度と1.5度では大きな差が出るとしている。

海面上昇について報告書は、1.5度の場合は2100年までに1986~2005年の海面水準と比べて26~77センチ上昇。2度の場合はさらに海水面は4~16センチ前後高くなるとした。1.5度に抑えることにより海面上昇のリスクにさらされる人は2度の場合より最大1000万人減らせるという

生態系への影響について生物種10万5501種を対象にした分析では、1.5度の場合でも昆虫の6%、脊椎(せきつい)動物の4%、植物の8%の種が生息域の半分以上を失い、2度の場合だとこうした影響は格段に大きくなるという。永久凍土が解ける面積や北極海で海水が凍結しない頻度なども1.5度と2度とでは大きな差が出るという。

特別報告書は、2015年12月にパリ協定が採択された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で要請を受けてIPCCが作業していた。40カ国の91人の専門家が、6000以上の科学文献などを分析してまとめた。全体で約1000ページに及ぶ。

IPCCは、地球温暖化の予測と影響、対策などについての科学的知見を集約し、対策に生かすことを目的に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が1988年に設立した。現在、先進国、発展途上国を含めて195カ国・地域が加盟している。これまで5回にわたり3つの作業部会評価報告書とそれらをまとめた統合報告書を作成しており、最新の統合報告書を2014年11月に公表した。現在、6回目(第6次)の評価報告書をまとめる作業を進めている。来年5月に京都市で第49回総会が開かれる予定。2007年にゴア元米副大統領とノーベル平和賞を共同受賞している。

画像2 産業革命以降の気温上昇が1.5度と2度の場合の世界各地の平均気温変化予想。 2度の場合は北半球の高緯度地域や北極周辺の気温変化(上昇)が際立っている(IPCC提供)
画像2 産業革命以降の気温上昇が1.5度と2度の場合の世界各地の平均気温変化予想。 2度の場合は北半球の高緯度地域や北極周辺の気温変化(上昇)が際立っている(IPCC提供)
画像3 2014年に公表されたIPCCの最新(第5次)統合報告書の表紙。現在の世界の気候変動対策の基本資料となっている(IPCC提供)
画像3 2014年に公表されたIPCCの最新(第5次)統合報告書の表紙。現在の世界の気候変動対策の基本資料となっている(IPCC提供)
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