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長崎大学学長が山下俊一教授擁護の声明

掲載日:2011年6月24日

長崎大学の片峰茂学長は23日、「福島県における放射線健康リスク管理活動について」と題するメッセージを公表した。この中で、長崎大学が大学を挙げて福島県に対する支援活動を行っていることを強調するとともに、「福島県に赴き、現場が抱える問題に直接接しながら、専門家として福島の原発事故による健康影響について一貫して科学的に正しい発言をしているのが山下俊一教授だ」と言い切っている。

山下氏は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長、同研究科附属原爆後障害医療研究施設教授で、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーも務める。また、首相官邸に随時助言を行う「原子力災害専門家グループ」の一員でもあり、テレビなどを通じて福島第一原子力発電所事故に伴う放射線影響について積極的に発言している。こうした活動の根底にあるのは、チェルノブイリ原発事故後の国際医療協力やセミパラチンスク核実験場周辺への医療協力などに実際にかかわった経験だ。

山下氏に対しては、市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」がアドバイザー解任を求める署名活動を展開中であるほか、「御用学者」と非難する声がウェブサイトに飛び交っている。ウイルス研究者でもある片峰学長は、こうした事態に対し科学者として山下氏を擁護する必要を感じたものとみられる。

福島第一原子力発電所事故後にとられた「避難を含む公衆を保護するための日本政府の長期的対応」については、「見事で非常に良く組織されている」と国際原子力機関(IAEA)評価された(2011年6月2日ニュース「津波の危険過小評価IAEA調査団指摘 現場、政府の対応は賞賛」)。しかし、その根拠となった危険とされる放射線量についての分かりやすい説明が政府からも科学者からもない、と感じる一般国民は多いとみられる。同時に山下氏のように明快な意見を積極的に発信する科学者には激しい批判の声が集まる現象が出ている。

放射線医学の研究者たちでつくる日本医学放射線学会は6月2日、「原子力災害に伴う放射線被ばくに関する基本的な考え方」と題する声明を公表し、ICRP(国際放射線防護委員会)の見解などを基に、小児には特別の配慮を求めつつも放射線に対する危険性を次のように説明している。

「100ミリシーベルト以下の低線量でのがんなどの増加は、広島・長崎の原爆被爆者の長期の追跡調査をもってしても、影響を確認できない程度である。原爆被爆では、線量を一度に受けたものであるが、今回は、線量を慢性的に受ける状況であり、リスクはさらに低くなる。そのため今回の福島の事故で予測される線量率では、今後100万人規模の前向き研究を実施したとしても、疫学上影響を検出することは難しいと考えられている。日本人のがん死が30%に及ぶ現代においては100ミリシーベルト以下の低線量の影響は実証困難な小さな影響であるといえる」

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