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ペルセウス座流星群、土星、スーパームーン…見応えたっぷり夏の夜空

2023.08.08

草下健夫 / サイエンスポータル編集部

 日頃都会で暮らす人々も、夏休みの旅行やお盆の帰省で美しい星空を見上げられる時節となった。今月は恒例のペルセウス座流星群の観測条件が比較的良いほか、地球に近づいた土星、見かけで今年最大の月“スーパームーン”などが楽しめる。天文ファンならずとも好天の日にはぜひ、宇宙を体感するひとときを過ごしたい。

ペルセウス座流星群。2016年8月13日未明に撮影した空に、前後計約4時間半に出現した明るい流星を合成したもの=岡山県浅口市(国立天文台提供)
ペルセウス座流星群。2016年8月13日未明に撮影した空に、前後計約4時間半に出現した明るい流星を合成したもの=岡山県浅口市(国立天文台提供)

月明かりの影響少ない「ペルセ群」

 流星(流れ星)は、宇宙空間の塵(ちり)が地球の大気圏に突入して燃え尽きる際、成分が光って夜空に筋を描く現象。特に多発する「三大流星群」の中でも、ペルセウス座流星群は毎年、比較的安定して数が多く観測しやすい。例年、学校の天文部などの夏合宿の格好の観測ターゲットとなる。略して「ペルセ群」とも呼ばれる。

三大流星群(国立天文台などの資料を基に作成)
三大流星群(国立天文台などの資料を基に作成)

 国立天文台によると、今年の発生のピーク「極大」は13日午後5時頃と予想されている。この時刻に日本ではあいにく日没前で観察できないが、前後の11~14日にかけ、目立って多く見られそうだという。午後9時頃から現れ、最も多くなるのは14日の夜明け近く(東京では午前3時台)の見込み。この時、空が暗い場所なら1時間あたり30個程度と予想される。前日13日の同時間帯も多いと期待。未明に月が昇ることもあり絶好条件とは言えないものの、新月(16日)が目前で細く、明るさはあまり気にならない。実際にどの程度観察できるかは場所や熟練度、視力、天気などにもよる。

彗星の軌道に帯状に残された塵に地球がさしかかって、流星群が起こる(国立天文台提供)
彗星の軌道に帯状に残された塵に地球がさしかかって、流星群が起こる(国立天文台提供)

 流星群が起こるのは、彗星(すいせい=ほうき星)の通り道に多くの塵が帯状に残されており、地球が毎年そこにさしかかる際に大気に飛び込んで、流星が多発するためだ。地球が塵の帯を通って流星群が起こる時期は、毎年決まっている。塵を残した天体「母天体」はペルセウス座流星群の場合、「スイフト・タットル彗星」だ。

 流星群の流星は空のどこにでも現れうるが、それぞれの光の筋をさかのぼって延長すると一点の「放射点」に集まる。大気に飛び込む流星群の塵は、全て彗星の通り道、つまり同じ方向からやってくる。それが地上から見ると空の特定の一点となっており、これが放射点だ。塵は放射点から飛び出した後、燃え始めて流星となり、移動して燃え尽きて消える。放射点は概念上のもので、そこに何か目印のようなものがある訳ではない。ペルセウス座流星群の放射点はペルセウス座付近にある。時間により、放射点の高度が高いほど流星の数が増える。なお流星群に属さない流星には、放射点は特にない。

 一つ一つの流星がいつ、空のどこに出るかは全く予測できない。なるべく空の開けた場所で、肉眼で観察する。シートを敷いて寝転ぶと楽だが、利用できる安全な場所であることを確かめる必要がある。熱中症や、高地などでは逆に夜の冷え込みに注意したい。

13~14日午前3時頃の東京の空で、ペルセウス座流星群の放射点は北東付近にある(国立天文台提供)
13~14日午前3時頃の東京の空で、ペルセウス座流星群の放射点は北東付近にある(国立天文台提供)

“消えゆく”美しい輪を望遠鏡で

50センチ望遠鏡で撮影した土星=昨年9月、東京都三鷹市(国立天文台提供)
50センチ望遠鏡で撮影した土星=昨年9月、東京都三鷹市(国立天文台提供)

 美しい輪を持つ土星が、地球から見て太陽の反対の位置に来ており、観察の好機を迎えている。27日に正反対の位置に来る「衝(しょう)」となる。地球との距離が近くなるなどして見かけ上、大きく明るくなる。衝の前後数日間の明るさは0.4等。太陽の反対にあるということは、つまり夕方頃に東から昇り、明け方頃に西に沈むので、一晩中眺められる。

 前述のペルセウス座流星群が極大となる13日の場合、午後11時に東京では南東付近の低めの位置に土星があり、明るさは0.5等。北東付近に放射点がある流星群と合わせて同じ夜に観察するのも、面白そうだ。

 土星は約30年周期で、地球は1年で太陽の周りを公転するため、互いの位置関係が変わっていく。また土星の輪は公転の軌道面から約27度傾いている。このため、地球から見える輪の角度は時間につれ変化している。2017年には輪が最も傾いてよく見えたが、再来年の25年には真横から見込むことになり、輪はとても薄いので一時期、消えたかのように見えなくなる。今年はその途中にある。小さめの望遠鏡でも輪が分かるので、できればどこかで見ておきたい。

土星の輪の傾きは地球からの見かけ上、変化していく(国立天文台提供)
土星の輪の傾きは地球からの見かけ上、変化していく(国立天文台提供)

下旬は月の話で盛り上がる

 31日の満月は今年、地球との距離が最も近くなり、スーパームーンとも呼ばれる状態となる。この時、地球と月の中心同士の間の距離は約35万7300キロ。今年最も遠かった2月6日の満月(同約40万6000キロ)に比べ、見かけの直径が約14%大きく、光る面積も約29%広く、その分明るくなるという。ただ並べて比べられる訳ではないため、違いには気づけないだろう。

 月が地球の周りを公転する軌道は楕円で、太陽や地球などの引力の影響も受けるため、地球との距離は変動している。そのためスーパームーンや、逆に地球から遠くて小さく見える「ミニマムーン」が起こる。特にスーパームーンは近年、報道もされて話題になるが、天文学の世界でこれらの定義ははっきりしていない。

 ちなみに今月下旬にはインドの月面着陸機・探査車「チャンドラヤーン3号」の着陸や、日本の着陸機「スリム(SLIM)」の打ち上げも予定されている。それぞれの国にとって初の月面軟着陸がかかっており、月の話題で盛り上がりそうだ。

今年の“スーパームーン”(左)と“ミニマムーン”の違い(国立天文台提供)
今年の“スーパームーン”(左)と“ミニマムーン”の違い(国立天文台提供)

 また22日は旧暦7月7日にあたり、「伝統的七夕(旧七夕)」と呼ばれる。伝統的七夕の日は年により変わる。現在の7月7日は例年多くの地域でまだ梅雨が明けていないが、伝統的七夕の夏空なら織姫と彦星を見つけられるかもしれない。ともに1等星で、織姫はこと座の「ベガ」、彦星はわし座の「アルタイル」。両者を隔てる天の川と共に、日々の喧噪(けんそう)から離れゆったり眺めたい。近年、スマホを空に向けると星座や星の位置が分かるアプリが充実し、初心者でも星を見つけるのが楽になっている。

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