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原発過酷事故防止には人材も

2013.02.08

 一般社団法人技術同友会の原子力発電所過酷事故防止検討会(主査・斎藤伸三・元原子力委員会委員長代理)が、提言「二度と原子力発電所過酷事故を起こさないために」 をまとめ、公表した。

 斎藤主査以外の委員は、成合英樹・元原子力安全基盤機構理事長(筑波大学名誉教授)、宮崎慶次・元総合エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会委員(大阪大学名誉教授)、杉山憲一郎・元原子力安全委員会原子炉安全専門審査会審査委員(北海道大学名誉教授)など、原発の安全規制に深く関わってきた人たちだ。

 提言の1、2は、「いかなる自然災害、人為事象も『想定外』として済まされない。『想定外』を無くす努力こそが大切」「原子力安全の確保の体系を確立し、その運用のための安全審査指針・基準類を既成概念に捉われずに見直し、世界的に高く評価されるレベルのものとする」となっている。現行の安全審査指針・基準類が、規制を強化してきた世界の潮流から立ち遅れた内容になっていることを認めたものだ。

 このほか、福島第一原発事故のような過酷事故を起こさないための対策を提言しており、原子力規制委員会が現在、検討中の新しい安全基準にも盛り込まれるものも多いと思われる。特徴は、アクシデントマネジメント(過酷事故を防止し、万一発生した場合にその影響を緩和する実効性ある方策)の重要性を繰り返し、強調していることだ。恒常的な設備で対応不能な事態に備えた可搬式・移動式設備など「いかなる事態に対しても柔軟に対応できる」ハード面の対策に加え、人についての提言が目を引く。

 具体策として電力会社に対し、原発ごとに「アクシデントマネジメント専門職」を置くことを求めている。「原子力発電システムを熟知し、事故時における原子炉の状況を的確に把握または推測し、適切な判断をし、なすべき作業を指示できる」能力を持ち、万一の事態に「設備の設置、人的配置」などに関し、所長に直言する役割を担う。原発サイトごとに常駐する監査官も同様の資格を持つ技術者であるのが望ましい、と規制機関にも同じことを求めている。

 提言が人を重視しているのは、福島第一原発事故についての次のような記述からも伺える。「運転員が想定外の事態に対応できなかったことは責められない。しかし、原子力発電の基礎、特に核反応の基礎を把握したものであれば、より適切な対応ができた可能性も否定できない」

 「電力会社に採用された原子力技術者の質は、昔に比べて落ちている」という声も、原子力規制官庁や電力会社のOBから聞かれる。人材の育成・確保が、日本の原子力界における大きな課題の一つになっている、ということだろうか。

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