レビュー

編集だよりー 2011年12月18日編集だより

2011.12.18

小岩井忠道

 書くほどの理由もないのだが、家電製品というものをほとんど持たない。テレビも10年以上前、息子が使い古し(14インチ)を回してくれたもので、特に不便は感じなかった。テレビ局というのは、通信社のニュースをほとんど使わない。しかし、ラジオ局は東京、地方を問わずよく使ってくれるので、通信社勤務時代のある時期、朝の5時ごろから周波数を何度も切り替えながら、どんな記事が使われているか聞き比べたものだ。夜、早く帰宅しようと心がけたわけではないから、当然、睡眠不足の日が多くなる。昼間の会議など、よく居眠りしていたことを思い出す。

 ということで、今の仕事を始めて以来、再び早朝のニュースを聴くようになったことは、全く苦にならない。早朝のニュースだけでなく、週末に各テレビ局が放送する報道番組もテレビの音声が入る小型ラジオで聴くのが当たり前になっていた。だから、地上波デジタル化は二重の打撃である。すぐに地上波デジタル放送の音声も入るラジオを求めて家電量販店に出かけたのだが、中波とFMが入るラジオしか売っていない。ラジオでも同時放送しているNHKの日曜討論以外、週末午前のテレビ報道番組が聴けなくなってしまったのは、大いに困ったのだが、ぐずぐずとテレビも買わずに過ごしていた。そうこうするうち、なんと長年役に立っていたラジオのスイッチが壊れてしまう。

 朝起きる前にまずは枕元のラジオのスイッチを入れる。そんな十数年来の生活習慣も変えざるを得ない。寝床を抜け出して、恐ろしく立ち上げに時間がかかるパソコンのスイッチを入れ(新しいワードソフトで送られてきたファイルを見るためにOffice2010を入れたら、猛烈に重くなってしまった)、Radikoでラジオ局のニュースを聴く…。そんな不便に何日、耐えていただろうか。ついにテレビを買わざるを得ない心境に追い込まれた。

 有楽町前の家電量販店に行くと、さまざまなメーカーの機種が並んでいて、どこがどう違うか見当がつかない。テレビ売り場の前を行ったり来たりしていたのだが、大勢いる店員のだれも、寄ってこないのには参った。とても値の張る大型テレビなど買いそうもない客にしか見えなかったということだろう。つい最近までその通りだったのだから、半分は当たっているが…。やむなく性格がよさそうな若い女性店員を見つけ、こちらから声をかける。

 プラズマテレビは、液晶に比べ、電力を食う。私はプラズマテレビを使っているから部屋が暖かく感じるくらい。液晶テレビは、LED(発光ダイオード)の光を背後ないし斜め横からあてる方式によって、節電効果がさらに上がった。加えて3原色に新たに黄色を加えた機種が出て、値段は高いが色はより鮮やかに…。

 ほとんど知らなかったことを分かりやすく説明してくれたので、すぐに信じて液晶、4原色というタイプを購入することにする。

 しかし、テレビの形もブラウン管テレビとは大変な様変わりだ。翌日配達された大型画面のテレビを入れても、用無しになった14インチのテレビを配達員が持ち帰ってくれたから、むしろ狭い部屋がだいぶすっきりしたくらいである。

 これで、地上波デジタルのテレビ音声も受信できるラジオがあれば、わが生活スタイルもすっかり元に戻るのだが…。しかし、これは望むべくもないようだ。中波とエフエムしか聴けないラジオを買う気が起きず、くだんの家電量販店のラジオ売り場を念入りにのぞいてみたのだが、目にとまったのは前にはなかった表示だけだった。

 「テレビ音声の入るラジオの販売予定はありません」

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