「中秋の名月」をことしも水戸・偕楽園で眺めた。「水戸大使の会」の総会を毎年、この日に合わせて開くことになっているからだ。
首都圏に住みながら、ふるさと振興のために何かしたいという立派な心意気、ないしおせっかいな気質を持つ。そんな人たちしかなれ(ら)ない「ふるさと大使」というNGO活動がある。全国ふるさと大使連絡会議のホームページによると、今や360ものふるさと大使の会があり、「水戸大使の会」は「茨城大使の会」と並んで、最も活発に活動していると自認する会となっているのだ。
茨城、水戸両大使の会の中心人物で、全国ふるさと大使連絡会議でも大きな影響力を持つ方が、編集者の高校の大先輩である。知名度、実績どれをとっても見るべきものなし。そんな編集者が、茨城県知事と水戸市長からそれぞれ大使を委嘱される光栄に浴しているのも、この先輩の引き立てによるものだ。このほか、同じ理由によって秋田県のにかほ市長からも大使を委嘱されている。「これ以上は分不相応なので、お引き受けできない」と大先輩には念を押している。
交通費、宿泊費、懇親会費などすべて手弁当というのが、ふるさと大使の会のさわやかなところだ。花火大会への寄付など活動が活発な水戸大使の会は、年会費まで収めている。「中秋の名月」の日に開かれる水戸大使の会総会は大体が平日だから、ことしも午前中に仕事を済ませ、半日休暇をとって参加となった。
ホテルでの総会の後、偕楽園へバスで移動、琵琶の演奏を伴った詩吟を聴きながら、野だてを楽しむ。午前中までの猛暑と打って変わり、半そでシャツだけで来たのが悔やまれるほどの涼しさで、上空を覆う雲の流れも速い。たが帰り道、上がったばかりの満月を一瞬だけ眺めることができた。
常盤神社の長くて急な石段を下りながら、水戸大使の会名誉会長、鶴田卓彦氏(元日経新聞社長、横綱審議会会長)に「伊藤滋さんは謝ってきましたか」と尋ねてみた。「横審は協会の執行機関ではございません。改革についてお節介を焼かなくてもいいんですよ。権威主義的な昭和の遺物ですね」。月刊誌「文藝春秋」9月号で、日本相撲協会外部理事の伊藤滋・早稲田大学特命教授にそこまで書かれたのだ。横審委員の皆さんがかんかんに怒ったことは、容易に想像できる。放駒・日本相撲協会理事長に伊藤氏への抗議文を出したとニュースで伝えられた後どうなったか、会長に確かめないわけにはいかない。
「謝ってこないね。まあ、理事長の立場もあるだろうから『善処を求める』という最後の一文は削ったよ」
伊藤氏、放駒理事長双方に対して深追いはしない、と見た。