レビュー

25%削減で一般家庭の年間負担36万円とは

2009.10.01

 政府の地球温暖化問題に関する閣僚会議が30日、温室効果ガス削減目標達成に必要な具体策や費用負担の試算などにあたる作業チームの設置を決めた。

 1日各新聞朝刊の記事は、温室効果ガスを2020年までに25%削減した場合、家計にどの程度の負担がかかるか再試算する、ことを見出しにとっている。麻生前政権は「25%削減したら一般家庭の年間負担は36万円に上る」という試算を理由の一つに挙げて、25%削減目標を批判していたからだ。

 鳩山政権は、この批判が的を射たものでないことを再試算によって示す意向と見られるが、では年36万円という金額の根拠とはいかなるものだったのか。各紙の記事にはそこまで詳しく書いてあるものはない。政府のサイトを探しても見あたらなかったので、日経新聞9月28日朝刊の視点欄に載った塩谷善雄論説委員の記事「『官』数字を読み解け 役所依存が生む“ご都合”試算」から、経産省がまとめたというこの試算の中身を見てみた。

 「試算ではまず2005年を起点として、毎年1.3%ほどGDP(国民総生産)が伸びると想定し、排出削減策を全く何も講じなかった場合の2020年のGDP、可処分所得、光熱費、失業率を予想する。その数字と、25%削減に必要な策を講じた場合に予測される2020年の数字と比較する。すると何もしない場合に比べ、25%削減した場合は20年の可処分所得に22万円の差ができると予想される、という次第なのである」

 この22万円とさらに光熱費の負担増14万円を加えると2020年の一般家庭の負担増は36万円に、というのが試算の内容であることが分かる。

 これがいかに誤解や曲解を広げやすい試算であるかを、塩谷論説委員は次のように書いている。

 「(試算は)毎年1.3%ずつGDPが伸びるという前提なので、現在と比べると、25%排出削減しても可処分所得の絶対額は70万円以上増える勘定になっている」

 ここまで解説されれば「それを先に言ってよ」と思う人は多いのではないだろうか。

関連記事

ページトップへ