お彼岸シンポジウムとも呼ばれている自然科学研究機構主催のシンポジウムが23日、都心で開かれた。今回のテーマは「脳が諸学を生み、諸学が脳を総合する」。いつものように独創的な研究を展開する研究者をずらりと講師陣に並べていた。
このシンポジウムは今回が8回目となる。リピーター(固定聴衆)が非常に多いと主催者が自慢するだけのことはあり、毎回、いすを追加するほどの盛況ぶりだ。今回は会場が変わったせいだろうか。珍しく空席もいくらかあったが、内容はこれまで以上に充実していたように見える。
ジャーナリトの立花隆 氏が、シンポジウムの企画、進行に大きな役割を果たしているのが、このシンポジウムの特徴だ。それが大勢の聴衆を集める最大の理由だろう、ということは、1年半前の当欄で書いた(2008年3月24日レビュー「シンポジウムの基調講演は必要不可欠か?」参照)。
重複も覚悟で、あらためて成功するシンポジウムとは、ということを考えてみた。
シンポジウムというのは、主催する方も大変だが、一日中、集中して聴いている方も相当なエネルギーを要求される。講演者やパネリストにわずかでも平板あるいは難解な話しぶりの人や当たり障りがないことしか言わない人が含まれていたりすると、そこで聴衆の集中力は途切れてしまう。中には、2度とこのシンポジウムには来ない、という聴衆も。悪貨は良貨を駆逐するという面が、シンポジウムにもありそうだ。
自然科学研究機構は旧国立大学共同利用研究所が集まってできた集合体である。今回のように脳、あるいは宇宙、生命といった根源的テーマでこれぞという講師を集めやすいことも人気の理由と思われる。講師、パネリストに名のある研究者をそろえるという点では、日本学術会議主催のシンポジウムも引けを取らないものが少なくない。ただし、せっかくの議論が中途半端に終わる印象を与えるものが時々ある。例えば、幅広い意見を、と学界だけでなく多方面から講師やパネリストを集めたシンポジウムにそうしたものが見られる。
卓越した研究者が自らの研究成果やその分野の全体状況を洗いざらいかつ上手に話す。このような講演に、多分、聴衆は満足するし、往々にして感動もするだろう。一方、どちらかというと手の内をさらけ出したがらない人や、そういう人が多い職種、業界というのもあるのも現実だ。
自分は脇役に徹し、主役は独創的でかつ話がうまい研究者に限る。立花 氏が切り盛りする自然科学研究機構シンポジウムが、毎回、多くの聴衆を満足させる秘訣(ひけつ)は、その辺りにあるような気がするが、どうだろう。