TBSテレビの報道番組「サンデーモーニング」の人気スポーツコーナー「週間ご意見番」を見ていたところ、やはりものの見事に無視されていた。11、12日に行われた全日本総合バスケットボール選手権の男女決勝戦である(1月13日編集だより参照)。卓球、アイスホッケー、スノーボードなどなど競技人口から言えば、はるかにマイナーなスポーツが取り上げられているのに、この扱いは決定的だ。小学生の卓球選手がジュニアの部で1勝を挙げたなんて映像を見せられて、バスケットボール界の指導者たちは、危機感を抱かないのだろうか。1年で最も重要な試合が、この程度の話題より下に見られているのである。
国際的に見ると競技人口と人気の両面からトップに位置するスポーツはサッカーだろう。次は多分、バスケットボールではないだろうか。特殊な米国でも、3大人気スポーツはアメリカンフットボール、バスケットボール、野球と言われており、ここでも最も人気のある競技の一角を占めている。競技人口だけで言えば日本でも高校生以下では、野球、サッカーと並ぶかそれ以上の“メジャー”な競技のはずだ。理科離れの現況と何やらダブって見えてしまう。小学生あたりまでは算数は世界のトップクラス、理科もそこそこ人気がある科目なのに高校、大学に進むにつれ(社会人になれば無論)理数離れ、特に理科嫌いが増えてしまう日本の現状と…。
理由は何か。日本人の体格、運動能力にマッチしていないスポーツという面があるかもしれない。しかし、そんなことを言い出したら、日本人にぴったり合うスポーツなどほとんどなくなってしまうのではないか。サッカーなどよくやっているという気がする。バスケットボール界との違いは、日本のレベルが低いことを自覚し、外国人指導者をどんどん呼ぶなどして、グローバル化に成功したからではないだろうか。
また、メディアとの関係も決定的に差がついてしまっている。大手メディアのスポーツ記者は、長い間、野球担当か、オリンピック(種目)担当かに極論すれば二分されてきたふしがある。プロ野球人気はピークをすぎたが、うまいことサッカーの人気が急上昇、さらに大リーグで活躍する日本人選手も増え出したから、取材ネタにはこと欠かない。ゴルフも主要な取材対象に育っている。
オリンピック種目の多くも、国際オリンピック委員会(IOC)の商業主義とあいまって、これまた良い方向に進んだ。スキー、スケートなど一握りの競技人口しかいそうもない(かつ見ててそれほど面白いとも思えない)ウインタースポーツの扱いが相変わらず大きいことからも伺える。最近、ジャンプやスピードスケートの記事で「エッ! まだこんな選手が優勝争いをしているの」という感想を持つ人は少なくないと思う。おそらくウインタースポーツの選手層が薄いのが大きな理由ではないか。競技人口がそれほど多くないという意味では柔道も同じだ。いまや柔道部がない中学、高校の方が多いと思われる。競技が大きく報道されるのは、4年に1度のオリンピックで、そこそこの成績があげられるからだ。少数の人しか興味を抱かないと思われるスポーツでも、大きく報道される仕組みが出来上がっているのである。競技人口がはるかに多いバスケットボールが、ほとんど蚊帳の外であるのが、余計目立つ。
高名な米国人ジャーナリストでおしくも1昨年、交通事故で亡くなったデイビッド・ハルバースタムに「勝負の分かれ目-力と金と才能のドラマ」(浅野輔訳、サイマル出版会)という著書がある。NBAのあるチームの活動を追いながら、米国のバスケットボール界の変容を描いたノンフィクションだ。この中に一人のテレビマンが出てくる。この人物によってNBAの試合と大学チームの試合が、ある時からゴールデンアワーにテレビ中継されることになる。それで、必ずしも人気が高くなかったバスケットボールが一挙に米国のメジャースポーツにのし上がった経緯が詳しく描かれている。
人気スポーツにするための戦略を考える人間がおそろしく少ない。日本のバスケットボールを見ると、そう考えざるを得ない。