思い出して顔が赤らむような話は数限りなくあるが、これもその一つだ。社会人になって間もなく、部の宴会で地球外高度生命体の話になった。「どこかにいたとしても、遭遇するのは不可能としか思えないから、いないのと同じ」。そんな意見を吐いて、先輩記者から相手にされなかったのだが、ひとりだけ人のよい大先輩が「そうとも言い切れないのでは」と反応してくれた。食事や飲みによく連れて行ってくれた面倒見のよいこの大先輩に対し、あろうことかむきになって、このずさんな主張を言いつのってしまったのである。
大声を張り上げるような恥ずかしい事態になってしまい、さすがにずっと反省する羽目に陥った。以来、地球外高度生命体やUFOの話が出ても自分の意見は言わないことにしている。
しかし、昨年末の出来事は気になった。「UFOの存在は確認していない。だから、対策なども特段検討していない」。民主党議員の質問主意書に対する政府答弁書のことだ。町村官房長官が「私はいると信じる」と記者会見で明言したことが新聞、放送で軽い話題もの的ニュースとして伝えられたのは、多くの人の知るところだろう。
たまたま、菊山紀彦氏(元宇宙開発事業団種子島宇宙センター長)からいただいた年初のメールで、氏があるところに面白いエッセイを書いていたことを知った。早速、気になっているくだんの出来事に触れ、あらためて寄稿をお願いしたというわけである(本日掲載のオピニオン「彼らはやって来たか」参照)。
菊山氏は技術者だから「宇宙人が宇宙船に乗って地球を訪れたという明確な証拠はない」という発言でとめているが、氏も「(少なくともこれまでは)UFOなどいるわけない」と考えているのは明らかだろう。興味深かったのは、UFOがなぜ地球にやって来られないかについて(これは将来、人類が地球外高度生命に遭遇できるか否か、に通じる)、2つの説が紹介されていることだ。菊山氏自身は、人類が首尾よく“宇宙人”に進化すれば地球外高度生命との遭遇も可能、と考えているようでもあるが…。
昔、米国の一般向け科学雑誌に人類がアンドロメダ星雲(これが銀河系に一番ちかい銀河ということで選ばれたのだろう)の中の天体に移住するという話が載ったことがある。巨大な宇宙船を直接、地上から飛ばすなどという映画によく出てくるような生易しい話ではない。何世代も命を引き継がないと到達し得ない距離だから、相当な集団で太陽系を出発しないことには、到達前に絶滅してしまう恐れがあるということだろう。まずは、冥王星だったか海王星だったかの外側に巨大な人工惑星を作り、そこに膨大な人数が移り住み、その上で、いよいよ巨大なエンジンをふかして太陽系、さらには銀河系からの脱出を試みる、という破天荒な話であった。
うろおぼえだが太陽系を出発したときこの人工惑星には100万人だかが乗っていたが、目的地に着いたときは1億人に増えていたといった風なことが書いてあった気がする。
仮に地球外高度生命体との遭遇の可能性を考えるなら、この程度のスケールの話を想定しないと駄目か、と妙に納得したものだ。
昨年12月5日、次のようなAFP電が流れたらしい。
米国のオンライン調査会社「Harris Poll Online」が11月に米国の成人2,455人を対象に行った意識調査の結果、回答者の3分の1がUFOや魔女、星占いを信じると回答した、という。UFO、魔女、星占いそれぞれについて信じるか否かを聞いて、信じるという答えがたまたま皆3分の1だったのか、それとも「UFO、魔女、星占い」をまとめて挙げて信じるかいなかを聞いたのかは、分からない。