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イノベーション25いよいよ具体化へ

2007.05.28

 2025年までを展望し、豊かな日本を実現するために取り組むべき政策を示した長期戦略指針「イノベーション25」を、イノベーション25戦略会議(座長・黒川清内閣特別顧問)が25日公表した。

 読売新聞が27日朝刊の社説で「戦略指針は、日本の科学技術力を最大限に生かし、国力を保つための道標として、重要な意義を持っている」と、大きな期待を寄せ、特に人材育成のための効果的な政策を求めた。

 黒川清座長は、これまでいろいろな場を利用し「イノベーションとは単なる技術革新とは異なる」ことを強調してきている。25日に公表された指針でも、「国内外の生活者の視点への立脚」、「官主導ではなく民の活力を最大限生かす仕組み」、「国際市場と国際貢献を意識した戦略」、「起業家の育成を推進する社会制度構築」、「公共利益を目指すNPO活動や社会起業家の育成と支援」など、まさに国民全体に対しても意識改革を迫る大胆な「政策ロードマップ」が示されている。

 これに対する反応は、同じ読売新聞27日朝刊、経済面の「一筆経上」欄にも現れているように見える。経済成長におけるイノベーションの役割を重視する経済学者、吉川洋・東京大学教授の言葉を引用したうえで、松田陽三編集委員が、次のように書いている。

 「この場合のイノベーションとは、単なる技術革新や新製品の開発にとどまらず、全く新しい発想で企業の経営から社会制度、産業構造までを刷新することを指す。…詰まるところ、成長率を高めるのに必要なのは、社会全体のイノベーションだということになる」

 一方、戦略指針が的を射たものになっているか、ということと、それが首尾よく実現するかは、また別の問題だ。

 26日の日経新聞朝刊経済面の記事は「『イノベーション戦略』政府最終報告 官が抵抗具体論欠く」と題して、だいぶ辛口だ。

 「イノベーションとは技術革新だけでない。制度を見直し新たな価値が生まれていく社会的変革を意味する」。こうしたとらえ方は、黒川清座長の考え方と変わらないと思われる。

 ただ、最終報告の内容については、不満ありということだ。最終報告がまとまるまでの「官の抵抗」として記事は、次のような例を挙げている。

 「IT(情報技術)を活用した在宅医療・介護の普及では、医師法見直しなど具体的な規制改革を明示することを目指したが、厚生労働省が反発。『予防・健康増進を重視する保健医療体系への転換』などあいまいな表現になった」

 「高度道路交通システム(ITS)の普及には道交法改正が必要との議論が出たが最終報告では『新たな車両・道路交通関係の制度の検討』と抽象的な課題を挙げただけ」

 こうしたことがあったと聞かされても、おそらく多くの国民はあまり驚かないのでは、とも思われる。「このような綱引きが関係省庁間で行われるのは、当たり前のことで、こうしたことは、黒川座長も、安倍首相も先刻、承知なのでは」と。(読売、日経新聞の引用は東京版から)

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