食用油の価格高騰を理由に、食品メーカー、キューピーが自社製品であるマヨネーズの値上げを発表したニュースは、新聞は一部が報じただけだが、9日朝のTBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」が、詳しく紹介していた。NHKラジオ番組「朝一番」でも、だいぶ前に評論家、内橋克人氏が、バイオエタノールへの需要増が、メキシコで主食であるトウモロコシの値上がりを招いていることを問題視していた。生活に身近な問題には、ラジオはより敏感だ、ということだろうか。
地球温暖化対策のために、石油の消費をできるだけ抑制する必要がある。そのためには、できる限り石油代替エネルギーの利用を進めなければならない−。ここまでは大方の人が賛成するだろう。だが、その有力手段である、バイオマス利用だけでも、はやくも問題が顕在化しつつあるようだ。
では、バイオマスエネルギーの利用推進と食品の値上がりは、避けられない関係にあるのだろうか。
昨年12月16日、日本学術会議が主催した「エネルギーと地球温暖化に関するシンポジウム」の資料を読み返してみると、基調講演を行ったノーベル物理学賞受賞者でもあるスティーブン・チュー米ローレンス・バークリー国立研究所長は、バイオマス利用の弊害について心配していないらしいことに気づく。
チュー氏が示した米エネルギー省と米農務省の試算によると、米国のバイオマス潜在量は、13億トンと見込まれ、米国のガソリン需要をすべてバイオ燃料でまかなうことも可能ということだ。
最も大きな利用可能量を持つとして挙げられているのがPerennial Crops(多年生植物、多年生作物)で、全体の35.2%、次いでCorn Stover(トウモロコシの茎、葉)19.9%、Forest(森林の間伐材などのことか?)12.8%、Crop Residues(穀物かす)7.6%となっている。それ以下はSoy(6.2%)、Wheat Straw(6.1%)、Grains(5.1%))…と続いており、食用作物を全く含まないのかどうかはもう一つ不明だが、少なくとも大半は食用品になるようなものではないように見える。
最も期待されているPerennial Cropsとは具体的にどのようなものだろうか。この利点を述べるチュー氏の話の中に「Switchgrass」というのが出てくる。インターネットで検索してみたら、米国にある多年生植物のようだ(http://www.ecologies.org/switchgrass.html参照)。
多年生植物の利点として、一度植えると10年間耕作の必要がないなどを挙げており、Switchgrassの場合、1年生の植物に比べ、養分となる窒素の流出が8分の1ですみ、トウモロコシに比べ土地の浸食も100分の1でしかない利点があるという。
また、チュー氏は、米国の農産物生産能力は自国の需要を上回っており、余剰能力をバイオマス生産に向けた方が国際的に見てもよい、とも言っていた。余剰農産物を作って輸出し、発展途上国の重要な生産物である農産物の輸出を妨害することをしなくて済むというわけだ。
バイオエネルギーの利用拡大に伴う影響については、長い目で見ることが必要かもしれない、ということだろうか。